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前途多難な夏休み3

お久しぶりです!更新止まってしまっていてすみません……!夏休み編ラストスパートです。よろしくお願いします!

「あの方が殿下の婚約者のセリーヌ様」

「堂々としていらしてお美しいわ」

「ええ、でもエスコートされてるのはラビア王子じゃなくて?」

「まあ、このような場に出るのは珍しい方なのに――」



この夏の王太子妃教育の集大成とも言えるお披露目の場。

貴族のお勤め、宮中で主催する舞踏会だ。

そこへラビア王子にエスコートされながら入場するセリーヌ。その姿に、会場の視線が一挙に向けられる。ああ、どうしてこんなことに。既に後悔を覚えながら、セリーヌは数日前のことを思い出していた。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


長かった王太子妃教育も、夏季休暇の終わりと共にそれはもう近い。その最後にセリーヌに待ち受けているのが、宮中で主催される舞踏会であった。そこで完璧な淑女としての姿を見せて、未来の王太子妃となる姿を周りに周知させると同時に、この王太子妃教育も完全な終了という形となるのだ。むしろこれまでの教育はこのためにあったと言っても過言ではない。しかしこれで尚更未来の王太子妃としての外堀を埋められてますます婚約破棄しにくくなるという状況に置かれるセリーヌはげっそりとしていた。

そしてその舞踏会では当然王太子であるアンドリューがセリーヌの相手となるはずなのだが、ここの所公務が忙しく、他国への訪問等で王子は舞踏会の日もギリギリまで公務に押されているらしい。彼は意地でも舞踏会には間に合わせて戻るようにと言っているのだが、正直間に合ってくれなくて全然構わないと思う。むしろ彼と入場なんてしたらひどい注目に逃げられない。

さて、どうなる事かと鬱々と宮中を歩いていたところで、ここで会うべく人でないトップ3の人物と鉢合わせてしまう。


「久しぶりだな。セリーヌ」

「え、えぇ……先輩……ラビア殿下もお元気そうで何よりですわ」


ああ、ここには神も仏もいないのか。フッと笑う酷く整った顔の男に、セリーヌはかろうじて引きつりかけた笑みを浮かべて返した。王宮に行く事を知った時からラビア王子の事も懸念していた。

しかしラビアは王族を嫌っている。集まりにも寄り付かない彼ならどうせ王城にも普段はいないのだろうと思っていたのに、最後の最後で出会ってしまうとは。

公式の場でもないし先輩でいいと言うラビア王子はセリーヌに口を開く。


「随分精が出てたようだが、不本意な妃教育も夜会でやっと終わりだな。良かったじゃねえか」


一ヶ月強の王太子妃教育のお陰でげっそりとしているセリーヌの顔を見てそう意味深に意地悪く笑うラビアにセリーヌも「ありがとうございます、お陰様で」と引きつりながら苦笑いを返す。言い方にもイラッとくるが、ここでそういう話題はやめてほしい。誰が聞いているかわからないのに。


「アンドリューが公務だそうだな」

「――え……えぇ」


舞踏会の事だろうか。彼はその3日前から連泊での地方公務と視察がある。当然ラビアも知ってるのかと思う。すると彼はこんな事を言い出した。


「俺がエスコートしてやろうか」


突然の言葉に驚く。セリーヌは固まる。何を言い出すのかこの人。


「ど、どういう事ですか?」

「アイツが相手だと簡単に抜け出せないだろう。俺も本当なら出たくないが体裁があってうるさくてな。出席は免れないが俺もさっさと会場を上がりたい」


なるほど、彼にも思惑があるのか。その為にセリーヌを使おうという魂胆か。


「挨拶も適当に済ませて終わらせよう。どうせ顔を見せればいいだけだ」


戸惑うセリーヌにラビアはこう続ける。


「それにたとえ顔を出した時間が短いと角が立っても、お前は俺のせいにできる。立場的に従うしかないからな。アイツが公務から戻る前に退場してしまえば戻ることもない。悪い話じゃないだろう」


確かに、魅惑的な提案だ。セリーヌにも損はない。むしろアンドリュー王子との舞踏会も、彼を待って遅れて入場して注目を浴びて目立つこともないだろう。それでも頷く事ができず渋るセリーヌに、ラビアは見透かすように言う。


「お前としても、公式の場でアンドリュー(アイツ)と並ぶのは極力避けたいんだろう?」


……そう。どちらかと言えば婚約破棄を目標とするセリーヌにとってアンドリュー王子との人目につく場は避けたい所。そしてラビア王子にはそれはもうバレている。様々な事を天秤にかけた結果、セリーヌはこう答えていた。


「――わかりました。では、よろしくお願いいたします。ラビア先輩」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


――そして冒頭。彼の提案を呑んだセリーヌだったが、早くも後悔している。どっちみち注目は避けられないのだが、もっと他に何かいい案があったんじゃないかと思う。空気のように舞踏会には顔を出し、ぬるっと退散したかったはずが、無駄に注目を受けている気がする。ただでさえ王族として表にあまり出たがらない男だ。それに輪をかけて顔がいい。目立つ事がないはずがない。


ミスった……そう思いながらラビア王子のエスコートを受けて歩いていると、会場で馴染みの顔が目に入った。アルモンドがすごい引き攣った顔でこちらを見ている。面倒なのと関わりたくないという気持ちが溢れ出ていた。それでもセリーヌは嬉しくてぱぁああっと心に花が咲く気分だった。悲しい。どうしてこうも気持ちが違うのか。ふと心の片隅で寂しく思う。

ラビア王子に知り合いを見かけたと言うと、すんなり行っていいぞと自由にされた。拍子抜けしたが有り難い。

気持ち的には「アルモンドぉぉおおおーーーー!!!」と言って走って泣きつきたいところだが、それもグッと我慢して淑女らしく彼の元へ向かう。逃げようとする彼を逃さぬよう素早く。


「アルモンド、お久しぶりですわ――っ」


そう言って彼ごと人目のつかないホールの端まで連れて行く。驚きで声も上がらないアルモンドを引っぱった。


「いやーもうほんと会いたかったわアルモンド。聞いてほしい事がいっぱいあって」

「突然何すんだお前……! 厄介事を連れてくるんじゃねえ! なんで会うたびにそんななんだ」


怒りと状況の把握に混乱するアルモンドに対しセリーヌはもはやこの感じに懐かしさを感じながらアルモンドの声を聞かず、はあと息を吐く。


「ねえちょっと助けてくれない? このままだと本当に王太子妃になりそうなんだけど。貴方だけが頼りなのよ」

「いや知らん知らん知らん」


高速で否定してくるアルモンド。


「そんな! 一緒に破滅フラグ回避してくれるって言ったじゃない!! いわば私達はもう運命共同体なのよ!?」

「いや俺は後方支援をちょこっとするって言っただけだし。ってかなんで第二王子と一緒にいるんだよ。いつの間に知り合ったんだよ。これ以上俺は厄介事に巻き込まれたくない」


まくし立てるような流れる否定。拒否反応がすごい。悲しくなった。


「しかたなかったのよ……アンドリュー様が公務で舞踏会に間に合うかって話が出てて、そこで助け舟を出して提案してくれたのがラビア先輩で。先輩もさっさと抜け出したいから利害が一応一致したというか……」

「って事はラビア王子は協力者って事か?」

「ええ……一応……」


怪訝な顔のアルモンドの言葉に声がすぼむ。これでアンドリュー王子の従兄弟でもある王族相手に実は婚約破棄したいのもバレてるなんて言ったらアルモンドは余計引くだろう。何考えてんだと気絶しそうだ。


「でもラビア王子にも極力近づきたくないんだろ。正直アンドリュー王子にエスコートされても変わらなかったんじゃないか」

「ええ、間違いなく攻略対象だろうしね……でもここで婚約者揃って参加して外堀を埋められるよりはマシかなって」


思ったのだが、絶賛今後悔中である。やはり痛いところをつく男だ。そして彼と話しながらはっとする。


「アルモンドにエスコート頼めばよかった……なんで気づかなかったんだろ」

「それ来ても絶対ェ断ってるからな。やらないぞ」


そうぶつくさ後悔をつぶやいていると、ダンスの曲が流れ始めた。ファーストダンスはエスコートしてくれた男性とするのがルールだ。

中央のダンスホールを見ると、彼が合図をしている。


「……ほら、流石に行かないとだろ。ファーストダンス踊らないと下手な噂になるぞ。まあどっちみち注目浴びるだろうけどな」


そう言ってそら行ったと追い出すようなアルモンドに他人事だと思ってと軽く睨みながら恨んで、セリーヌはホールで待つラビア王子の元に戻った。

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