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#19 錬魔士への緊急依頼 その二

「よし、それじゃあ出発するぞ」


準備を終えた僕は工房の前で最終確認をしていたが、ふと思い出してララに言った。


「ああ、今回はララは留守番な」


「なんでよ!!」


いや、元々は全員で行くつもりだったんだけど精霊達の住む集落へドラゴン族のララを連れて行くのは少々マズイ気がしてミルフィに相談したら凄く悩んだ末に控えた方がいいかなとの結論だったので置いて行く事にしたのだか、伝えるのを失念していて今伝えたと言う訳だ。


「ええー!留守番なんてつまんないー!」


地団駄を踏むララを見てダメ元でフラリスに聞いてみた。


「フラリス。僕がおとなしくするように監視するからララも連れて行っていいかな?」


「いいですよ。錬魔士様のお墨付きがある方なら大丈夫でしょうから」


「本当!やったー!」


「いいか、絶対に勝手な行動はするんじゃないぞ!」


僕は横からため息をつきながらジト目で見てくるミルフィから視線を避けるようにララの方を向いて注意を促した。


「よし、それではフラリスの先導で深水峡の谷へ向かう事にする」


「「「「はい!」」」」


僕達は工房のドアにclosedの掛札を掲げて街の門へ向かった。


* * *


深水峡の谷は街の北西1日くらいの所にあるらしいのだが、普段は濃い霧に覆われていて案内無しだととてもではないが谷まで辿りつけないらしい。


ただ、一つだけ助かるのが【魔物が出ない】事であった。なぜなのかフラリスに聞いてみたら【精霊の加護】による結界のおかげだと言われた。


「それじゃあこの霧は魔物避けの結界って事でいいのか?これは人間にとって安全な物なのか?」


「直接は体に取り込んでも毒にはなりませんが精霊の補助無しだと方向感覚が狂ってしまって一定の場所まで達すると出口方面へ強制的に向かわせられてしまうんです」


「ですから人間も魔物も谷の奥へは辿り付く事が殆んどありません。でも、今は里内で発生している原因不明の病気によって少しずつ結界が弱まっているのです」


スイスイと迷う事なく前を歩きながらフラリスが里の現状を話してくれた。


僕は歩きつつ、フラリスの話を聞きながら現状の確認と病気の予測をしていたが元々の世界には精霊は居ないし、草花は言葉を話さないので体調が悪いとかも言うはずもないから話だけでは予測がつかないのが現状だ。


「とりあえず見てから対策を考えるしかないか・・・」


そう呟きながら深い霧の中を進むこと1時間程、急に視界が開け始めた。


「この先の大岩を曲がった所からが【深水峡の谷】と呼ばれている場所。私達は【幻花海の里】と呼んでいます」


そう言いながらフラリスを先頭に僕達は里の入り口に差し掛かった。


そこは少し寂れた農村をイメージしたかのような空間が広がっていた。村の中心辺りには御神木を思わせるような巨木がそびえ立ち辺りには色とりどりの草花が咲き乱れていた。


「ここが深水峡の谷か・・・」


思っていた景色とあまりにも異なる状況に戸惑いながらも僕はフラリスに聞いた。


「里の状況は逼迫していると説明されたけど見たところ特に問題があるようには見えないんだがどう言うことか詳しく教えて貰えるかな?」


助けを求めてきた時のフラリスの言葉は嘘を言っていた感じはなかったし、ミルフィの知り合いを悪く思う事は出来ればしたくない。おそらく何らかの理由があると考えた僕は単刀直入に質問した。


「そ、そんな・・・」


「私が助けを呼びに里を飛び出した時には草花の殆んどが枯れるか萎れていて仲間の精霊達の多くが動ける状態ではなかったはず!」


「里の守り神であり、私達精霊の長であるフリッジス様がご自身の生命力を比較的症状の軽かった数名に分け与えて各地の識者に助力を求めて走ったが、私よりも先に里を救える者を連れてきたの?そして既に解決したとでも言うの?」


フラリスは自分の置かれている状況が信じられないかのように辺りを見回しながら呟いていた。おそらく僕の質問は耳に入っていないらしく、フラフラと里の中心にある巨木に向かって歩いて行きだしたので仕方なく僕達もそれに合わせて歩く事にした。


「フラリス!今までどこ行ってたのよ!」


巨木に向かって歩いていると横からフラリスを呼ぶ声が聞こえた。


「イリアス!無事だったの!?」


フラリスは驚いた顔でこちらに走ってくる人影、おそらく精霊であるであろう少女に向かって名前を呼んだ。


「無事って何よ?2日前にあんたが突然『助けを呼んでくる!』とかいいながら里を飛び出して行ったから皆心配してたんだよ!」


「だって、里が・・・皆が・・・フリッジス様だって・・・」


「何寝ぼけてるのよ!この状況の何処にそんな危機感があるって訳?それよりもあんた、こんなにも部外者を里に招き入れて大丈夫?理由によっては里から追放されるか、部外者の記憶抹消、最悪の場合は皆処刑よ」


「そ、そんな・・・嘘よ!だって!何で!どうして!?」


イリアスと言う少女は恐ろしい事をさらりと言ってくれるが何かがおかしい。違和感だらけだ。今までのふたりの会話は全てにおいて噛み合っていない。


考えられる事はどちらかが嘘をついていると言う事だがフラリスが嘘をついてまで助けを呼びに来たメリットが今のところ思い付かない。強いて言えば妄想や夢などを現実と勘違いした暴走とかならあり得るかも知れないが、可能性は低いと思っている。イリアスが嘘をつくメリットは部外者に里の状況を知られたくない、もしくは洗脳されていると考えればあり得なくはない。だがそれも推測の域を出ない・・・か。


「仕方ない『アレ』を使うか。あまり気が進まないけど埒があかないし、あまり長引かせると僕達の立場も危なさそうだしね」


僕はそう言うとシールにあるものを異空間収納(アイテムボックス)から取り出してもらった。

毎度更新スローですみません。


どうやら厄介事に巻き込まれた感じのタクミ達ですが何やら秘策がある様子です。

タクミ達の活躍を期待しながら次回更新までお待ち下さいませ。


よろしくお願いします。

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