第五話
チビは毛布の上に横になっていた。
戸が開いた。年長児の一人が入ってきた。足元の袋を壁際へ置いた。
「まだ寝てんの」
チビは顔を向けた。
フットが床に座った。パンを割り、チビの前へ置いた。
チビは起き上がった。片手を床についた。少ししてから壁まで下がり、背中をつけた。
パンには手を伸ばさなかった。
フットが自分の分を食べた。残りを紙の上へ置いた。
チビは膝を立てた。咳が二度出た。口を袖で押さえた。
壁の根元には小石が一つあった。
フットがチビの額に手を当てた。
手を離した。
「また行くぞ」
チビはしばらく座っていた。
フットが靴を履いた。
チビも靴を引き寄せた。片方を履いた。踵が入らず、つま先を床に打った。もう一度引き上げた。
もう片方も履いた。
立ち上がると壁に手をついた。
戸の外へ出た。
フットはいつもより短い歩幅で歩いた。
チビは後ろをついていった。
路地の角で咳が出た。
チビは止まった。膝に手を置いた。
フットも止まった。
咳が止まると、チビは立った。
二人はまた歩いた。
途中で荷車が通った。フットが端へ寄った。チビも壁際へ寄った。
荷車が過ぎると歩き出した。
白い壁の建物の前で、チビは一度止まった。
フットが戸を開けた。
チビは中へ入った。
長椅子には子どもが何人か座っていた。
奥から咳が聞こえた。
フットとチビは空いたところに座った。
戸が開いた。
「次」
フットが立った。
チビも立った。
奥へ入った。
白い上着の男が椅子を指した。
チビは椅子の前まで歩いた。座面に手をつき、体を押し上げた。
男はチビの額に手を当てた。
手を離した。
「おくち、あけて」
チビは口を開けた。
男は中を見た。
次にシャツの裾を上げた。
胸に耳を当てた。
チビは両手を膝の上に置いた。
男はそのまま位置を変えた。
一度耳を離した。
反対側へ回り、もう一度胸に耳を当てた。
チビが咳をした。
男は離れた。
咳が止まると、もう一度同じ位置へ耳を当てた。
しばらくして離した。
男はチビのシャツをさらに上げた。
胸と腹を見た。
チビの体が上下した。
男は片手の指を曲げたり伸ばしたりした。
何度か繰り返した。
シャツを下ろした。
男はチビの唇を親指で押した。
離したあと、その場所を見た。
チビの顎を少し持ち上げた。下から唇を見た。
手を離した。
次に右手を取った。
爪の先を押した。
指を離した。
別の指も同じように押した。
「きょう、ごはん食べた?」
「まだ」
「お水は?」
「のんだ」
「おしっこ、出た?」
「あい」
男はフットを見た。
「昨日から、どれくらい起きてる」
「ほとんど寝てる。起こせば起きる」
「食ったのは」
「昨日の夜に少し。朝はまだ」
「歩いてきた?」
「歩いた。途中で一回止まった」
男はチビを椅子から下ろした。
チビの足が床についた。
「立って」
チビは立った。
男は部屋の端を指した。
「そこまで歩いて」
チビは歩いた。
五歩ほど進んだところで足を止めた。
壁へ手をついた。
手を離した。
また歩いた。
部屋の端まで行った。
「戻って」
チビは向きを変えた。
二歩進んだところで咳が出た。
足を止めた。
口を手で押さえた。
男はその場に立っていた。
咳が止まると、チビはまた歩いた。
椅子の前まで戻った。
男が椅子を指した。
チビは座った。
男が器に水を入れた。
「これ、のめる?」
チビは両手で受け取った。
一口飲んだ。
また飲んだ。
途中で器を膝に置いた。
男は横に立っていた。
チビは器を持ち直した。
少しずつ飲んだ。
残りを飲んだ。
空になった器を男へ渡した。
男は器の中を見た。空の器を台の上へ置いた。
チビは口元を袖で拭いた。
チビは両手を膝へ戻した。
男はチビを座らせたまま、胸の前へ手を置いた。触れずに何度か上下を見た。
もう一度チビの胸に耳を当てた。
位置を変えた。
耳を離した。
チビのシャツを下ろした。
椅子の脚を元の位置へ戻した。
「今日は水飲ませて、寝かせといて」
フットがチビのそばに立った。
男が続けた。
「息がずっと苦しそうだったり、起きなかったり、呼んでも返事しなかったら、夜でもいいから来て」
フットがうなずいた。
チビは椅子から下りた。
男は戸のほうへ向いた。
「次」
外の長椅子から子どもが一人立った。
その後ろにも子どもが座っていた。一人は付き添いの膝へ頭をつけていた。別の子が口を押さえて咳をした。
フットが聞いた。
「どう?」
「前と同じ。寝かせといて」
フットは戸を開けた。
チビが先に出た。
建物の外へ出ると、チビは壁際で止まった。
咳が出た。
フットも止まった。
チビが歩き出すと、フットも歩いた。
途中で一度、チビが立ち止まった。
フットは先で待った。
チビは壁に手をついた。手を離し、また歩いた。
路地の端まで来ると、フットが一度止まった。チビも止まった。
フットのところまで来た。
フットは歩き出した。チビも後ろを歩いた。
戸口で男が木箱を二つ重ねていた。隣の男が縄をまとめた。
「橋向こう、まだ人多いってよ」
「朝もか」
男は木箱を持ち上げた。もう一人が戸を押さえた。二人はその前を通った。
二人は寝床へ戻った。
チビは戸口で靴を脱いだ。
片方を手で押して壁際へ寄せた。
毛布の上へ座った。
そのまま横になった。
フットが桶を近くへ置いた。
チビは目を開けたまま横になっていた。
日が落ちてから、フットが桶から水を汲んだ。
チビは横になったまま上体を起こした。
片手を床についた。
フットが器を渡した。
チビは水を飲んだ。
器を膝に置いた。
もう一口飲んだ。
器をフットへ返した。
「あした?」
「そうだな」
「ごさい?」
「そうだよ」
「いしも?」
「やるって言っただろ」
「うん」
チビは横になった。
フットも隣に横になった。




