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スラムにて  作者: 雁幸三


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第六話

戸の向こうで荷車の車輪が鳴った。年長児が一人、床に座って靴を履いた。別の一人は桶の水で顔を洗い、濡れた手を服で拭いた。戸は半分開いていた。外を人が通り、板の壁の向こうで箱を置く音がした。市場のほうへ向かう足音が路地を抜けた。


フットは毛布から出た。座って靴を引き寄せ、片方ずつ履いた。壁際の上着を取り、腕を通した。床に落ちていた布を拾って畳み、空いた場所へ置いた。桶のそばにあった器を端へ寄せた。年長児の一人が毛布をたたみ、壁際へ重ねた。


もう一人が戸口を通って外へ出た。残った一人は袋の口を結び、肩にかけた。フットは立ち上がり、上着の前を合わせた。桶を持ち上げた年長児が戸の外へ運んだ。床の端に置かれていた皿が重ねられた。靴を履いた年長児が戸口で一度しゃがみ、ほどけた紐を結び直した。


戸の外で男の声がした。


「ベルガ、また勝ったってよ」


「帝国になったとか言ってたな」


足音が二つ、戸口の前を通った。


隣でチビは横になっていた。


フットはチビのそばへしゃがんだ。


「起きろ」


チビは応えなかった。


フットは手を伸ばした。


チビの腕に触れた。


体温がなかった。


(終)

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