第二話
朝、チビは毛布の中で足を動かした。
隣にいた年長児が起き上がった。毛布の端がめくれた。チビも頭を出した。
戸の近くで靴を履いていた一人が言った。
「フット、桶」
「あとで」
フットは壁際の箱を開けた。中から布に包んだものを出した。
チビが近くへ寄った。
フットは布を開いた。中に石があった。親指より少し大きく、灰色の中に白い筋が入っていた。
フットは石を戸の隙間から入る光にかざした。薄いところだけ向こうの明るさが通った。
「にいに」
フットは石を下ろした。
チビが手を出した。
「落とすなよ」
「あい」
石はチビの手のひらに乗った。
チビは両手で持った。表を見て、裏返した。指で白い筋をなぞった。
フットが桶から指先に水をつけた。石の上へ落とした。濡れたところに細い線が増えた。
チビは石を傾けた。
「返せ」
チビはフットの手に置いた。
フットは布で包んだ。
「五歳になったらやる」
箱へ戻した。
昼、チビは路地でしゃがんでいた。
地面に小石を五つ並べた。
一つを指で押した。
「にいに」
フットは壁にもたれて紐を結んでいた。
「なんだ」
「あと、なんかいねる?」
「五回」
チビは並べた小石を見た。
「いち、に、さん、よん、ご」
五つ目を指で押した。
フットは紐の端を噛んで引いた。
チビは小石を一つずつ拾った。路地の端へ投げた。
フットは立ち上がった。路地の向こうで年長児の一人が空の袋を落とした。風で袋が転がった。
「フット、取って」
フットが走った。袋が角へ行く前につかんだ。
「ほら」
袋を投げ返した。
チビも同じところまで走った。フットはもう戻っていた。
路地の端で、年長児の一人が袋を受け取った。別の一人が壁際に置いた木箱をひっくり返し、中の布切れをまとめた。
「ベルガ、また勝ったって」
「どこよそれ」
「知らねえ。向こうのほうだろ」
「帝国になったって聞いたぞ」
「ベルガ帝国?」
「さあな」
袋を受け取った年長児は口を縛った。もう一人は布切れを箱へ戻し、箱を壁際へ押した。
チビは地面に残っていた小石を拾った。四つまで持ち、五つ目を見つけると片手の中へ押し込んだ。一つ落ちた。拾い直した。
「ご」
フットは返事をしなかった。
チビは五つを壁の根元へ並べた。端から指で触った。
その日の夜、チビはフットの横で毛布に入った。
「ねたら?」
「一個減る」
「あい」
チビは横になった。
次の日、年長児の一人が市場へ行く支度をしていた。
チビは壁の根元へ行った。小石が五つ並んでいた。一つをつまみ、戸の外へ放った。
残った四つに順番に触れた。
「いち、に、さん、よん」
一つが横へ転がった。チビは拾って元の場所へ戻した。四つを少し離して並べ直した。
年長児の一人が戸を開けた。チビは小石の前に箱の欠片を置いた。足が当たらないところまで押した。
フットは戸口で靴紐を結んだ。
チビが外へ出た。
路地の向こうで二人の子どもが木片を投げていた。チビもそちらへ行った。
木片は壁に当たり、地面へ落ちた。拾った子がまた投げた。
チビの番になった。片手で投げた。木片は壁まで届かず、途中で落ちた。
「ちけえ」
「もういっかい」
チビは拾いに走った。
木片の端に泥がついていた。チビは指で拭った。指についた泥を服の裾で拭いた。
別の子が先に取った。チビは立ち上がり、その子を追った。足音が路地に続いた。角を一つ曲がった。
路地の向こうで、チビが咳をした。
一度止まり、口を手で押さえた。
また走った。
路地の途中で桶を運んでいた女が立ち止まった。チビたちが通るまで桶を足元へ置いた。子どもが一人、桶の後ろを回った。チビも続いた。
木片を取った子が細い道へ入った。チビも入った。途中に置かれた籠を避け、積んであった板の間を抜けた。
先の広いところで追いついた。
「かして」
「取れよ」
子どもが木片を後ろへ放った。
チビは向きを変えた。木片を拾った。
咳が出た。
膝に手をついた。
「おせえぞ」
チビは顔を上げた。
「いまいく」
木片を持って走った。
昼を過ぎて寝床へ戻った。
フットが桶の水を飲んでいた。
チビは戸のそばに座った。
「にいに」
「ん」
「あと、なんかいねる?」
「四回」
チビは右手を出した。指を四本立てた。
親指も上がった。
フットが親指を押した。
「四」
チビは親指を曲げた。
「よん」
フットは桶をチビの前へ置いた。
チビは両手で持って飲んだ。
夕方、チビは外へ出た。
路地で子どもたちが走っていた。チビも混じった。
しばらく走ると咳が出た。
立ち止まった。
咳が二度続いた。
近くにいた子が振り返った。
「まだやる?」
「あい」
チビは走った。
木片が溝へ落ちた。チビはしゃがみ、指先で引っかけて取った。泥を服の裾で拭いた。近くの子へ投げた。届かず、地面に落ちた。
「もういっかい」
拾って、今度は両手で投げた。
寝床へ戻るころにも咳が出た。
フットは床に座っていた。破れた袋の口を縛っていた。
チビはその前へ行った。
また咳をした。
フットが顔を上げた。
「水飲め」
チビは桶のところへ行った。
水を飲んだ。
戻ってきて、フットの前に座った。
「にいに」
「なんだ」
チビは自分の胸に手を当てた。
「こんこんってなったあと、ここがね、ぎゅーっとするの」
フットは袋を壁際へ置いた。
「じゃあ寝てろ。水、もう一回飲んどけ」
「あい」
チビは桶のところへ戻った。




