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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間レイド①

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第六話 今は信じよう

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 王城から使者が来た。

 応接室の空気が変わる。

 誰もが身構えた。


 執事も。

 家令も。

 騎士達も。

 公爵自身も。


 数日ぶりの接触だった。


 そして。

 良い知らせだとは思えなかった。



 案内された男は若かった。


 騎士ではない。

 文官だった。

 服装も質素である。


 だが。

 公爵は気付いた。


 顔を知っている。


 第二王子の側近の一人だった。


「第二王子殿下の使いか」


「はい」


 男は深く頭を下げる。


「何の用だ」


 声は冷たい。

 隠す気も無かった。


 文官は懐から封筒を取り出した。


「殿下からお預かりしております」


 公爵は受け取る。

 封蝋を確認する。


 間違いない。

 第二王子本人だった。


 中を開く。

 文書を読む。


 最初の数行で。

 公爵の表情が変わった。


「これは……」


 思わず呟く。


 旧監査局。

 不正会計。

 架空商会。

 不審送金。

 複数の貴族名。


 まだ証拠ではない。


 だが。

 間違いなく糸口だった。


「誰が見つけた」


 文官は答える。


「アメリア嬢です」


 応接室が静まり返った。


 執事も。

 家令も。

 騎士達も。


 全員が固まる。


 そして。

 公爵は目を閉じた。


 深く。


 長く。


 息を吐く。


「やはりか」


 それしか出なかった。


 牢へ入れられた。

 婚約を破棄された。

 罪を着せられた。


 それなのに。


 あの娘は。


 仕事を始めた。


 それが妙に納得できた。


 そして。

 酷くアメリアらしかった。


 文官は続ける。


「もう一つございます」


 公爵は顔を上げる。


「アメリアお嬢様は」


 一拍。


「宰相派へ繋がる手掛かりを発見されました」


 応接室の空気が止まる。


「何だと」


「殿下は現在、水面下で動いております」


 文官の表情に迷いはなかった。


「そして」


「殿下よりお伝えするよう申し付かっております」


 公爵は黙って聞く。


 文官は真っ直ぐ公爵を見る。


「信じて待ってほしい」


 静かな声だった。


「もう少しだけ」


「アメリア嬢は終わっていない」


 沈黙。


 長い沈黙だった。


 やがて。

 公爵は視線を落とす。


 文書を見る。


 数字。

 名前。

 送金記録。

 報告。


 見慣れたものだった。


 アメリアの仕事だ。


 間違いない。


 牢の中だろうが。

 監視下だろうが。


 あの娘は。


 仕事をする。


 昔から。

 ずっと。


「全く」


 小さく笑う。


「本当に面倒な娘だ」


 執事の口元も僅かに緩む。


 公爵は立ち上がった。


「騎士団への招集は中止だ」


 周囲が顔を上げる。


「旦那様」


「まだ早い」


 静かな声だった。


「娘は戦っている」


 一拍。


「ならば」


 窓の外を見る。


 遠く。

 王城の方向を。


「今は信じよう」


 誰も反論しなかった。

 出来なかった。


 皆知っている。


 アメリア・フォン・アルフォードが。

 一度仕事を始めたら。

 最後まで終わらせる人間だと。


 公爵は窓の外を見続けた。


 娘は動き出した。


 だから。

 父もまた。

 動く時を待つ。


 それが今。

 自分に出来る最善だと。

 信じて。

お読み頂き、ありがとうございます。

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