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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間レイド①

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第四話 娘を返せ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 アメリアが連れて行かれた。

 公爵は静かに激怒していた。



 公爵は執務室にいた。

 机の上には書類が積まれている。


 だが処理する気にはなれない。

 頭の中は娘のことだけだった。


 アメリアは無実だ。

 それは確認した。

 証明も出来る。

 記録も残っている。


 だから分からない。


 何故ここまで強引に進める必要がある。



 窓の外を見る。


 庭では騎士達が訓練をしていた。


 昔、アメリアも混ざっていたことがある。

 あの時は十歳だった。


 騎士達に混ざり。

 訓練内容の改善案を出した。


 結果。

 翌月から訓練内容が変わった。


 騎士団長が頭を抱えていた。


 本当に。


 昔からそうだった。


 どこへ行っても。

 何をしていても。


 仕事を増やす。

 そして改善する。


 厄介な娘だ。


 どうしようもなく。


 誇らしい娘だった。



 ノック。

 執事が入ってくる。


「旦那様」


「何だ」


「王太子殿下がお見えです」


 全身から殺気が漏れそうだった。


 よくも来られたものだ。


 本気でそう思う。



 応接室へ向かう。


 扉を開く。


 ルーカスがいた。


 立ち上がる。

 顔色は悪い。

 痩せこけてもいる。


 だが。

 どうでも良かった。



「公爵」


「……」


 許可はしない。

 座ることもしない。

 挨拶も返さない。


「謝罪に参った」


 耳障りな言葉だった。


 謝罪。


 その一言で済むと思っているのか。



「アメリアには」


「申し開きのしようもない」


 言い終わる前だった。


 拳が動いた。


 鈍い音。


 ルーカスが吹き飛ぶ。


 床へ転がる。



 騎士達が剣へ手を掛ける。


 公爵家側も同じだった。

 空気が張り詰める。


「動くな」


 ルーカスが言った。


 立ち上がる。

 口元から血が流れている。


「公爵」


 二発目。


 今度は避けない。

 まともに受けた。


 公爵は理解していた。


 ルーカスは反撃しない。


 だが、容赦もしない。


「謝罪が聞きたいのではない」


 低い声だった。



「娘を返せ」



 沈黙。


 ルーカスは何も言わない。

 言えないのだ。


 返せない。

 それが分かる。

 だから余計に腹が立つ。


「公爵」


 三発目。


 ルーカスが椅子へぶつかる。


 静寂。


 公爵は息を吐いた。

 少しも気分は晴れない。


 足りない。

 全く足りない。


 殴った相手が違うからだ。


 本当に殴るべき相手は。

 今ここにはいない。


「帰れ」


 短く告げる。


 許さない。


 許せない。


 だが。

 それ以上に。


 今は時間が惜しかった。


 ルーカスはゆっくり頭を下げた。

 何か言いたそうだった。


 だが結局何も言わない。



 応接室の扉が閉じる。

 静かになった。


 公爵は窓の外を見る。

 王城の方向だった。


「旦那様」


 執事が声を掛ける。


「騎士団への連絡を」


 執事が固まる。


「全員ではない」


 一拍。


「まだだ」


 静かな声だった。


「だが準備はしておけ」


 執事は深く頭を下げた。


 公爵は再び王城を見る。


 “娘を返せ。”


 その言葉だけが。

 胸の中で何度も繰り返されていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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