第九話 ……動いたか
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
王城へ戻った。
空は既に明るい。
夜明けは終わっていた。
アルフレッドは執務室へ向かう。
だが。
違和感はすぐに分かった。
護衛が増えている。
昨日まで一人だった。
今日は五人。
しかも。
見慣れない顔ばかりだった。
(早いな)
思わず苦笑する。
公爵家へ行ったことは把握されている。
そう考える方が自然だった。
執務室へ入る。
扉が閉まる。
しばらくして。
側近が入ってきた。
顔色が悪い。
「殿下」
嫌な予感がした。
「何があった」
側近は一瞬躊躇う。
そして。
絞り出すように言った。
「アメリア嬢が拘束されました」
沈黙。
アルフレッドは目を閉じた。
やはり。
断罪。
そして拘束。
全て予想通りだった。
だからこそ。
胸の奥が重い。
「移送先は」
「旧監査局です」
やはり。
そう思う。
だが。
嬉しくはなかった。
この時点では。
まだ分からない。
自分の賭けが正しかったのか。
いや。
正しかったとしても。
アメリアは苦しむ。
助ける方法はあったかもしれない。
その考えが頭を離れない。
◇
数日が過ぎた。
アルフレッドは何も出来ない。
国王には会えない。
監視は増える。
動けば報告される。
王城は静かだった。
不気味なほど。
机に座る。
書類を見る。
だが頭に入らない。
(手詰まりか)
初めて思った。
王太子は利用された。
公爵家は激怒している。
自分は監視下。
アメリアは拘束された。
打つ手が無い。
自分で賭けた。
だが。
負けたのかもしれない。
その時だった。
廊下が騒がしい。
文官が走る。
騎士も走る。
何かあった。
アルフレッドは顔を上げる。
「何だ」
扉の向こうで声が飛ぶ。
「旧監査局から……」
その瞬間。
アルフレッドは立ち上がった。
「何だと」
扉が開く。
飛び込んできた文官は息を切らしていた。
「不正です!」
「何?」
「旧監査局から報告が!」
沈黙。
アルフレッドの口元が僅かに動く。
生きていた。
潰えていなかった。
希望は。
そして。
アメリア・フォン・アルフォードが。
第二王子は窓の外を見る。
王城が騒がしい。
人が走る。
紙が飛ぶ。
そして。
ほんの少しだけ笑った。
「……動いたか」
誰にも聞こえない声だった。
賭けは終わらなかった。
今。
ようやく始まったのだから。
お読み頂き、ありがとうございます。




