表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間アルフレッド①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/147

第八話 まだ終わっていないと思います

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 夜明け前だった。


 王城はまだ眠っている。

 廊下にも人影は少ない。


 アルフレッドは外套を羽織る。


 扉の外には監視役。


 だが。

 夜明け前の交代時間。

 唯一隙が生まれる時間だった。


 最低限の護衛だけを連れ。

 第二王子は静かに城を出る。


(時間がない)


 卒業パーティーは終わった。


 宰相は動いた。

 王太子も動いた。


 ならば。

 次は自分が動く番だった。



 アルフォード公爵邸。

 空はまだ暗い。


 突然の訪問。

 当然歓迎はされない。


 応接室へ通される。

 重苦しい沈黙。


 やがて。

 扉が開く。


 アルフォード公爵。


 一睡もしていないのだろう。

 目の下には濃い隈。


 だが。

 その目は燃えていた。


「何の御用でしょう」


 冷たい声だった。


 アルフレッドは立ち上がる。


「謝罪に参りました」


 公爵は鼻で笑った。


「謝罪ですか?」


 その一言だけで十分だった。


 怒っている。

 本気で。


「王家を代表して――」


「不要です」


 即答。


 アルフレッドは言葉を飲み込む。


 公爵は椅子へ座る。

 深く息を吐いた。


 沈黙。


 先に口を開いたのは公爵だった。


「……どうするおつもりですか」


 アルフレッドは顔を上げる。


「何を、でしょうか」


 公爵の視線が鋭くなる。


「娘です」


 短い一言。


「婚約破棄」

「断罪」


「ここまでは良い」


 良くはない。


 だが。

 公爵はそう言った。


「問題はその先です」


 アルフレッドも理解していた。


 宰相は終わらせない。

 断罪だけで終わるはずがない。


「私も同意見です」


「なら」


 公爵が机へ肘を置く。


「何処へ」


 沈黙。


 公爵も分かっている。

 アルフレッドも分かっている。


 断罪の次がある。


「恐らく」


 アルフレッドは静かに答えた。


「拘束されます」


 公爵の拳が握られる。


 だが驚かなかった。


 予想していたのだろう。


「理由は」


「後始末です」


 アルフレッドの声は冷静だった。


「公爵令嬢を断罪した」


「それだけでは終われない」


「口封じか」


「あるいは」


「利用です」


 そこで初めて。

 公爵が眉を寄せた。


「利用?」


「宰相は無駄を嫌います」


「排除するだけなら早い」


「ですが」

「ここまで手間を掛けている」


「何か目的があります」


 公爵は黙る。


 そして。

 小さく呟いた。


「娘は」


 初めて父親の顔になる。


「何をされる」


 アルフレッドは即答できなかった。

 分からないからだ。


 ただ。

 一つだけ。

 確信がある。


「働かされるでしょう」


 公爵が固まる。


「は?」


 当然の反応だった。


「宰相は成果を欲している」


「アメリア嬢は成果を出す」


「つまり」


「使います」


 沈黙。


 それは想定外だったらしい。


 公爵はしばらく考え込む。


 そして。

 小さく笑った。


 怒りの笑いだった。


「娘らしい」


 その一言に。

 アルフレッドも少しだけ笑った。


 そう。

 アメリアらしい。


 牢へ放り込まれても。

 おそらく仕事を始める。


 そんな馬鹿な話が。

 あの令嬢なら成立する。


 しばらく沈黙。


 そして。

 公爵が言う。


「私は動くべきでしょうか」


 アルフレッドはすぐに答えなかった。


 それは。

 この訪問の本題だった。


 宰相に対抗するか。

 今すぐ動くか。


 長い沈黙の後。

 アルフレッドは言った。


「まだです」


 公爵の目が細くなる。


「根拠は」


「ありません」


 正直に答える。


「ですが」


 そこで言葉を切る。


 自分でも説明できない。

 証拠も無い。


 それでも。

 妙な確信だけがある。


「アメリア嬢は」


 公爵と視線が合う。


「まだ終わっていないと思います」


 応接室に沈黙が落ちた。


 夜明けが近い。

 窓の外が少しずつ明るくなる。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ