第七話 今、会うべき相手は別だな
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
卒業パーティーが終わった。
夜も更けている。
王城は静かだった。
表面上は。
アルフレッドは執務室へ戻る。
その後ろには護衛。
いや。
監視だった。
宰相派の騎士。
昨日まではいなかった男。
「お疲れ様でございました」
男は微笑む。
「そうか」
アルフレッドは短く答えた。
扉が閉まる。
護衛は外。
だが監視されていることは分かる。
執務机へ座る。
紙を引き寄せた。
状況整理。
ペンを走らせる。
”王太子 掌握済み”
次。
”アメリア 拘束予定”
次。
”ミリア 隔離”
次。
”公爵家 激怒確定”
そして最後。
”国王 不明”
ペンが止まった。
国王。
父王だけが見えない。
宰相は動いている。
ルーカスも動いている。
自分も動いている。
なのに。
父王だけが見えない。
(確認しなければ)
立ち上がる。
そのまま執務室を出た。
監視役も付いてくる。
無言で。
国王執務室へ向かう。
夜の廊下は静かだった。
足音だけが響く。
やがて。
国王執務室前へ到着する。
護衛騎士が二人。
見慣れた顔だった。
「陛下へ取り次げ」
騎士達が固まる。
一瞬だけ。
「申し訳ございません」
アルフレッドは眉を寄せた。
「取り次げと言った」
「陛下はご多忙にございます」
沈黙。
またそれか。
「緊急案件だ」
「申し訳ございません」
同じ返答だった。
アルフレッドは騎士を見る。
騎士は視線を落とした。
理解する。
この男達の問題ではない。
命令が出ている。
明確に。
アルフレッドは踵を返した。
監視役が付いてくる。
その姿を横目で見ながら歩く。
(会わせない気か)
父王に。
第二王子を。
嫌な確信が芽生える。
◇
執務室へ戻る。
椅子へ腰掛ける。
窓から王城を見下ろした。
明かりが見える。
文官が動いている。
騎士も動いている。
だが。
よく見ると違和感があった。
最近増えた顔。
最近昇進した人間。
最近配置換えされた人間。
思い返すほど。
宰相派が多い。
警護。
文官。
補佐官。
どこを見ても。
宰相の影が見える。
(そういうことか)
アルフレッドは目を閉じる。
王太子は掌握された。
自分は監視されている。
国王には会えない。
王城の中では。
既に勝負が始まっていた。
そして。
自分は遅れた。
机の上に視線を落とす。
書きかけの紙。
”国王 不明”
その文字を見つめる。
しばらくして。
ペンを置いた。
「いや」
小さく呟く。
「今、会うべき相手は別だな」
国王ではない。
王太子でもない。
今。
最も怒っている男。
アルフォード公爵。
アルフレッドは立ち上がった。
夜明けと共に動く。
そう決めた。
王城の灯りを見下ろしながら。
第二王子は静かに目を細める。
盤面は崩れた。
だが。
まだ終わってはいない。
その確信だけが。
胸の中に残っていた。
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