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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間アルフレッド①

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第六話 お前はどこまで行く

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 卒業パーティー前日。


 第二王子執務室。

 アルフレッドは側近達を集めていた。


 全員が険しい顔をしている。

 当然だった。


 これから起きることを。

 皆理解していたからだ。


「結論は出た」


 アルフレッドが言う。


 部屋が静まる。


「助けない」


 沈黙。


 そして。

 一人の側近が立ち上がった。


「殿下」


 珍しく感情的な声だった。


「アメリア嬢は潰されます」


 アルフレッドは否定しない。


「分かっている」


「ならば」


「証拠はない」


 側近が言葉を詰まらせる。


 その通りだった。


 予測はある。

 確信もある。


 だが証明できない。


「しかし」

「分かっているなら」


 アルフレッドは窓の外を見た。


 王城は静かだった。

 静か過ぎるほどに。


「これは賭けだ」


 側近達が顔を見合わせる。


「殿下」


「今はまだ話せない」


「……っ」


 側近が言葉を詰まらせた。


 その時だった。


 コンコン。


 扉が叩かれる。

 部屋の空気が変わった。


「入れ」


 扉が開く。


 見知らぬ騎士だった。


 いや。

 正確には知っている。


 宰相派の男だ。


 男は綺麗に一礼する。


「ご挨拶に参りました」


 アルフレッドは無言。


「本日より殿下の警護を担当させて頂きます」


 側近達の顔色が変わる。


 監視。


 誰も口にはしない。


 だが。

 全員理解した。


 男は笑う。

 実に丁寧に。


「今後は私が殿下のお側につかせて頂きます」


 アルフレッドは男を見る。


 そして。

 小さく笑った。


「そうか」


 それだけだった。


 男が退室する。


 部屋に沈黙が落ちた。


「殿下」


 側近の声。


 アルフレッドは首を振った。


「もう遅い」


 誰も反論しない。

 出来なかった。


 宰相は既に動いている。


 そして。

 自分も監視対象になった。


 つまり。

 宰相も警戒している。


(やはり始まったか)


 アルフレッドは目を閉じた。



 翌日。

 卒業パーティー。


 華やかな会場。

 音楽。

 笑い声。

 祝福。


 誰も気付かない。

 今日が嵐の日だと。


 アルフレッドは会場を見渡す。


 ルーカス。

 ミリア。

 アメリア。


 全員がいた。


 そして。

 宰相も。


 アルフレッドは目を細める。


 ルーカスが立ち上がった。


 側近が息を呑む。


「殿下」


 止めたい。

 その一言が伝わってくる。


 アルフレッドは肩へ手を置いた。


 そして。

 小さく呟く。


「堪えてくれ」


 側近が唇を噛む。



 会場は静まる。

 誰もが王太子を見る。


 そして。

 始まった。


「アメリア・フォン・アルフォード」


 アルフレッドは黙って見ていた。


 婚約破棄。

 断罪。


 予想通りだった。


 だが。

 ただ一つ。


 予想を超えたものがある。


「そうですか」


 アメリアだった。


 怒らない。

 叫ばない。

 否定もしない。


 静かだった。


 本当に。

 静かに。


 アルフレッドは思う。


(本当にそう来るのか)


 思わず笑いそうになる。

 こんな状況で。


 だが。

 それがアメリアだった。


 断罪は終わる。


 会場がざわめく。


 その時。

 宰相と視線が合った。


 宰相は微笑む。

 勝者の笑みだった。


 アルフレッドは睨み返す。

 無言で。


(勝ったと思うな)


 心の中だけで呟く。


 そして。

 会場の出口へ向かうアメリアの背中を見た。


 盤は整った。

 駒は動いた。


 ならば。

 後は見るだけだ。


「さて」


 誰にも聞こえない声。


「お前はどこまで行く」


 アメリア・フォン・アルフォード。


 第二王子の賭けは。


 この日。

 静かに始まった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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