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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第二章 学園入学編

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第二話 なぜか人が集まる

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。


 入学から二週間。

 アメリアは早くも疲労困憊だった。


「眠いですわ……」


 昼休み。

 図書館の窓際。

 アメリアは本気で帰りたかった。


 朝。

 王妃教育。

 午前。

 授業。


 昼。

 交流会。

 午後。

 剣術。


 夕方。

 魔法学。


 夜。

 王城での実務補助。


 休みがない。


「なぜ学園とは学ぶ場所なのに、こんなに忙しいのでしょう」


 誰にも答えられない疑問だった。


「失礼します」


 声がした。


 顔を上げる。


 一人の令嬢が立っていた。


「ご機嫌よう、アメリア様」


「ご機嫌よう」


 同学年の侯爵令嬢だった。

 名前は確か――


(誰でしたかしら)


 思い出せない。


 だが相手は嬉しそうだった。


「以前、入学式でお会いしました」


(お会いしたのは覚えていますの)


 名前だけが出てこない。


「何かご用件かしら」


「歴史学の課題について少々……」


「ああ」


 アメリアは納得した。


「こちらをご覧になる?」


 ノートを差し出す。


 侯爵令嬢は目を見開いた。


「よろしいのですか?」


「ええ」


 アメリアは首を傾げる。


「皆同じ授業ですもの」


 当然だった。


 しかし。


「ありがとうございます!」


 なぜか感激された。


 意味が分からない。


◇十分後


 アメリアはさらに困惑していた。


 一人だったはずなのだ。


 本当に。


 一人だった。


 なのに。


「アメリア様」

「こちらを教えていただきたく」

「その本はどこで?」

「剣術の先生はどなたを?」


 増えた。


 人が。


 なぜか増えた。


 五人。


 八人。


 十人。


 さらに増える。


 図書館司書が困惑するほど。


「……」


 アメリアが沈黙する。


 何か原因がある。


 そう考える。


 不正を探す時と同じ顔で。


 冷静に。


 客観的に。


 原因を分析する。


 一分後。


(分かりませんわ)


 本当に分からない。


 ただ質問に答えていただけだ。


 勉強方法を教えた。


 本を貸した。


 おすすめの教師を紹介した。


 それだけ。


 それだけなのに人が増える。


 意味不明である。


◇学園の反対側


「またか」


 ルーカス王太子が顔をしかめた。


「殿下?」


「見ろ」


 友人達が視線を向ける。


 図書館。


 アメリアの周り。


 十数名。


 全員楽しそうに話している。


「相変わらずだな」


「アメリア嬢は人気者だからな」


「うるさい」


 ルーカスは面白くなかった。


 入学してまだ二週間。


 なのに。


 もう人が集まっている。


 自分の周囲より多い。


 それが面白くない。


 そして本人は。


 図書館の窓際で。


 本気で困っていた。


(帰りたいですわ)


 友達が欲しかったわけではない。


 派閥が欲しかったわけでもない。


 人気者になりたかったわけでもない。


 ただ静かに本を読みたかった。


 それだけである。


 だが。


「アメリア様!」


 また一人増えた。


「今度お茶会を開くのですが!」


 アメリアはそっと目を閉じた。


 予感がした。


 良くない予感が。


 公爵家で経験した。


 あの予感。


 仕事が増える時の予感である。


 そしてその直後。


「アメリア!」


 聞き慣れた声が響いた。


 王太子ルーカス。


 元気いっぱい。


 面倒くさい権化。


 アメリアは思った。


 学園生活、思った以上に地獄かもしれませんわね。


お読み頂き、ありがとうございます。

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