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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間アルフレッド①

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第四話 ……考えさせてくれ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 卒業パーティーまで二日。

 アルフレッドは机に積まれた資料へ目を通していた。


 公爵家。

 学園。

 王太子。

 宰相。


 それぞれ別の報告書。


 だが。

 内容は同じ場所へ収束していた。


 アメリア・フォン・アルフォード。


 アルフレッドは最後の一枚を置いた。


「なるほど」


 側近が顔を上げる。


「何か分かりましたか」


 アルフレッドは小さく息を吐いた。


「婚約破棄だ」


 部屋が静まる。


 側近は固まった。

 本当に一瞬だけ。


「本気ですか」


「公爵家周辺の調査」

「学園関係者への聞き取り」

「王太子への接触」

「アメリア嬢への身辺調査」

「そこまで揃っている」

「なら答えは一つだ」


 卒業式。

 卒業パーティー。

 大勢の貴族。

 外交官。

 王族。


 舞台としては十分過ぎる。


「ですが」


 側近が眉を寄せる。


「婚約破棄だけのために、ここまでしますか」


 アルフレッドの視線が細くなる。


 その一言で気付く。


 違う。


 婚約破棄では足りない。


 わざわざ学園内の人間関係を調べる理由。

 ミリア・ローゼン周辺を洗う理由。

 生徒会関係者へ接触する理由。


 婚約破棄だけなら不要だ。


「いや」


 アルフレッドは首を振る。


「断罪だ」


 側近の表情が強張る。


「アメリア嬢を加害者に仕立てる」

「婚約破棄はそのための舞台装置だ」


 沈黙。


 だが。

 アルフレッドはまだ納得しなかった。


 宰相は慎重な男だ。

 ここまで手間を掛けるなら。


 もっと先がある。


「終わりませんね」


 側近が呟く。


「終わらない」


 即答だった。


 断罪して終わるなら。

 ここまで盤面を整えない。


 公爵家を揺さぶり。

 王太子を利用し。

 学園まで巻き込む。


 そこまでやって得られるものが。

 婚約破棄だけのはずがない。


 アルフレッドは机を指で叩く。


「投獄だ」


 部屋が静まった。


 側近も理解したらしい。


 断罪。

 そして投獄。


 公爵令嬢を政治的に殺す。


 そこまで行って初めて意味がある。


「どこへ送るつもりでしょう」


 アルフレッドは考える。


 牢。

 離宮。

 保護名目の隔離。


 様々な可能性が浮かぶ。


 そして。

 一つの場所へ辿り着いた。


「……旧監査局か」


 側近が目を見開く。


 旧監査局。

 今は半ば閉鎖状態。

 書庫同然。


 誰も近寄らない。


 だが。

 過去の監査資料だけは大量に残っている。


 アルフレッドは黙り込んだ。


 監査資料。

 記録。

 帳簿。


 その単語が頭の中で繋がる。


 アメリア。


 記録魔。

 改善癖。


 問題を見ると放置出来ない。


 そんな人間を。

 大量の未整理資料の山へ放り込む。


 普通ならただの左遷だ。


 だが。

 アメリアなら。


(何をさせるつもりだ)


 思考が止まらない。


 監査。


 そこまで考えたところで。

 アルフレッドは目を閉じた。


「助けますか」


 側近が静かに聞く。


 止めるなら今だ。


 卒業パーティーまで二日。

 まだ間に合う。


 だが。

 アルフレッドは即答できなかった。


 証拠は無い。

 予測だけだ。


 王族同士で動けば王城が割れる。


 それは宰相の思う壺かもしれない。


「……考えさせてくれ」


 側近が一礼する。

 何も言わず部屋を出た。



 一人になる。

 静かな執務室。


 アルフレッドは机へ残された資料を見る。


 アメリア・フォン・アルフォード。


 その名前だけが。

 妙に重く感じられた。


 そして。

 第二王子は初めて迷う。


 助けるべきか。


 見守るべきか。


 答えはまだ出なかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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