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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間アルフレッド①

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第二話 まだ早い

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 異変は続いていた。


 卒業式が近づくにつれ。

 むしろ加速しているように見える。



 第二王子執務室。

 アルフレッドは書類を読んでいた。


 王都近郊の税収報告。

 数字に異常は無い。


 平和そのものだった。


 ノックの音。


「失礼いたします」


 側近だった。


「どうぞ」


 アルフレッドは顔を上げる。


「追加報告です」


 表情を見る。

 少し硬い。


「続けて」


「王太子殿下が宰相府へ頻繁に出入りしております」


 アルフレッドの手が止まった。


「頻繁とは」


「ここ一ヶ月で十数回」


 多い。

 明らかに。


 王太子と宰相。

 接触自体は珍しくない。


 だが。

 回数が多すぎる。


「内容は」


「不明です」


 アルフレッドは椅子に背を預けた。


(宰相か)


 最近その名前ばかり聞く。


 公爵家。

 学園。

 王太子。


 全部に出てくる。


「他には」


 側近は一枚の紙を差し出した。


「こちらを」


 アルフレッドは目を通す。


 そこに並ぶのは名前。


 貴族。

 文官。

 学園関係者。


 最近。

 アメリア・フォン・アルフォードへ接触した人物一覧。


 思わず眉が動く。


 多い。

 不自然なくらい。


「調べたのか」


「念のため」


 良い側近だった。

 言われる前に動く。


 アルフレッドは一覧を見る。


 学園教師。

 卒業生。

 使用人。


 まるで。

 身辺調査だった。


(なるほど)


 ここまで来れば分かる。


 宰相派は動いている。


 しかも。

 アメリアへ向けて。


 問題は理由だった。


 アメリアは派閥に興味がない。

 政治にも興味がない。

 権力欲も薄い。


 少なくとも。

 アルフレッドにはそう見えていた。


 だからこそ分からない。


 なぜ狙う。


 少し考える。


 答えは出ない。


 だが。

 一つだけ予想は出来た。


 宰相は何かを準備している。


 そして。

 王太子もそこにいる。


 それだけで十分だった。


「監視を継続」


「はっ」


「介入は不要」


「よろしいのですか」


 アルフレッドは小さく笑った。


「まだ早い」


 情報が足りない。

 動く理由も無い。


「ただ」


 側近が顔を上げる。


「卒業パーティー当日は予定を空けておけ」


 沈黙。


「何か起きると?」


 アルフレッドは窓の外を見る。

 雲一つない青空だった。


 だからこそ。

 嫌な予感がした。


「起きるかもしれない」


 根拠は無い。

 証拠も無い。


 ただ。

 空気がそう言っている。


 公爵家。

 学園。

 宰相。

 王太子。


 ここまで材料が揃っていて。

 何も起きない方が不自然だった。



 側近が退出する。

 部屋に静寂が戻る。


 アルフレッドは資料を机へ置いた。


 そして。

 小さく呟く。


「本気か」


 もし予想通りなら。

 相当大きな話になる。


 狙われているのが。

 ただの公爵令嬢ではないからだ。


 アメリア・フォン・アルフォード。


 変人。

 優等生。

 王太子婚約者。


 今のところ。

 アルフレッドの評価はその程度だった。



 まだ知らない。


 その評価が数日後に。

 大きく変わることを。


 アルフレッドはまだ知らなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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