表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ルーカス①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/137

第六話 申し開きのしようもない

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 公爵家へ向かう馬車の中。


 ルーカスは何も話さなかった。


 同行する騎士達も。

 誰も話さない。


 重苦しい空気だけがあった。


 資料は見た。

 記録も見た。


 だが。

 見れば見るほど。

 分からなくなった。


 いや。

 違う。


 分かってしまった。


 アメリアは残していた。


 報告も。

 調査も。

 処理も。


 全部。


 そして。


 自分は確認しなかった。


 ミリアにも。

 アメリアにも。


 何一つ。


 拳を握る。


(謝らなければ)


 それだけだった。



 やがて。

 公爵邸が見えてくる。


 巨大だった。


 そして。

 空気が重い。


 門が開く。


 だが。

 歓迎されている気配は無い。


 当然だった。


 娘を奪ったのは自分だ。



 応接間へ通される。


 長い沈黙。


 扉が開く。

 公爵が入ってきた。


 ルーカスは立ち上がる。


「公爵」


「……」


 返事は無い。


 公爵の目は冷たい。

 氷のようだった。


「謝罪に参った」


 言う。

 頭を下げる。


「アメリアには」


「申し開きのしようもない」


 そこで止まる。


 次の瞬間だった。



 拳が飛んできた。



 視界が揺れる。

 床へ倒れ込む。


 騎士達が動く。


「殿下!」


「動くな!」


 ルーカスが止めた。


 立ち上がる。

 口の中に血の味が広がる。


 公爵は怒っていた。


 本当に。

 今まで見たことが無いほど。


「謝罪だと」


 低い声だった。


「娘を投獄しておいて」


「今更か」


 ルーカスは何も言えない。


 その通りだった。


「公爵」


 再び口を開く。


 だが。

 最後まで言えなかった。


 二発目。


 今度は受け入れた。


 再び倒れる。


 応接間は静かだった。


 公爵家家臣達もいる。


 だが。

 誰も止めない。


 当然だ。

 止める理由が無い。


 ルーカス自身が分かっていた。


 悪いのは自分だ。


 立ち上がる。

 ふらつく。


「申し訳」


 三発目。


 今度は椅子へぶつかった。

 鈍い音が響く。


 それでも。

 公爵の怒りは消えない。


「謝罪が聞きたいのではない」


 公爵が言う。


「娘を返せ」


 ルーカスは固まった。


「返せ」


 低い声だった。

 怒鳴り声ではない。

 だから余計に重い。


「娘を返せ」


 沈黙。


 返せない。


 アメリアは旧監査局の牢獄の中。


 国王にも会えない。


 状況も動かせない。


 返せない。


 だから。

 何も言えない。


 公爵は目を閉じる。


 深く息を吐いた。


「帰れ」


 その一言だった。


 許されなかった。

 謝罪も受け取られなかった。


 当然だった。


 ルーカスは立ち上がる。


 そして。

 ゆっくり頭を下げた。



 帰りの馬車。

 窓の外を見ていた。


 王都の空は曇っていた。


 拳の痛みはあった。


 だが。

 そんなものはどうでも良かった。


 耳に残る。


『娘を返せ』


 その言葉だけが。


 何度も。

 何度も。


 頭の中で繰り返されていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ