表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ルーカス①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
80/213

第五話 アメリア

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 眠れなかった。


 謁見は拒否された。

 父王には会えない。

 王城の中には見えない壁がある。


 そして。

 自分は何も知らなかった。



 ルーカスは執務室にいた。

 机の上には書類が積まれている。


 だが。

 手は動かない。


(俺は利用されたのか)


 昨夜から同じことばかり考えていた。


 宰相。

 婚約破棄。

 ミリア。

 アメリア。


 全部繋がって見える。


 だが。

 証拠がない。


 いや。

 証拠。


 そこで。

 ふと思い出した。


(証拠か)


 記憶が蘇る。


 学園時代。

 生徒会室。

 予算書。

 活動報告書。

 備品管理台帳。


 アメリアは何でも残した。

 本当に何でも。


『何故そこまで書く?』


 昔。

 そう聞いたことがある。


『後で楽になりますので』


 アメリアは当然のように答えた。


『確認も出来ますし』


『責任の所在も分かります』


『便利ですわ』


 当時は分からなかった。


 だが。

 今なら少し分かる。


(あいつなら)


 残している。

 絶対に。


 潔白でも。

 有罪でも。


 どちらでも構わない。


 アメリアなら残す。


 ルーカスは立ち上がった。


「資料を持って来てくれ」


 文官が振り返る。


「どの資料でしょうか」


 少し考える。

 そして答えた。


「学園関係だ」


「学園関係、ですか」


「生徒会の記録も含めて全てだ」


 文官は不思議そうな顔をした。

 それでも頭を下げる。


「承知しました」



 数時間後。

 大量の書類が運び込まれた。


 ルーカスは目を通す。


 生徒会報告書。

 会議記録。

 学園祭決算。

 予算執行報告。


 信じられない量だった。


(何だこれは)


 細かい。

 あまりにも。


 誰が何を提案したか。

 誰が承認したか。

 いつ実施したか。

 全部書いてある。


 しかも。

 綺麗だった。


 驚くほど。


 ルーカスは一枚の資料を手に取る。


 令嬢間トラブル対応記録。


 思わず固まる。


 中には。

 当時問題になった嫌がらせ案件がまとめられていた。


 証言。

 聞き取り。

 調査内容。

 処分内容。


 全て残っている。


 そして。

 そこには。


 ミリア・ローゼンを加害した令嬢達の名前。


 調査結果。

 対応内容。


 全部載っていた。


 だが。

 どこを見ても。


 アメリアが命令した痕跡は無い。


 無い。


 本当に。

 どこにも。


 ルーカスは次の資料を開く。


 さらに次。


 さらに次。


 無い。


 出てこない。


 嫌がらせはある。


 問題もある。

 記録もある。


 だが。

 アメリアが首謀者だという証拠だけが。


 どこにも無い。


(そんな馬鹿な)


 額に汗が浮かぶ。


 昨日までなら。

 気付かなかったかもしれない。


 だが。

 ミリアの言葉を聞いた後では違う。


『私、何も頼んでいません』


『アメリア様は違います』


 その言葉が重なる。


 そして。

 ルーカスは気付く。


 自分は今。

 初めて事実を見ようとしている。


 今までは違った。


 誰かの説明。

 誰かの報告。

 誰かの判断。


 それを信じていた。


 だが。

 アメリアは違った。


 記録を残している。

 確認出来るように。

 後から検証出来るように。


 その意味が。

 今になって分かった。



 窓の外は夕暮れだった。

 赤く染まる空を見ながら。


 ルーカスは一枚の書類を握り締める。


(アメリア)


 初めてだった。


 婚約破棄してから初めて。

 ルーカスは本気で思う。


 もしかすると。

 自分は。

 取り返しのつかないことをしたのかもしれない。


 その考えだけが。

 静かな執務室に残っていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ