第二話 もう一度謁見を申し込んでくれ
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
夜明け前だった。
ルーカスは眠れなかった。
婚約破棄。
アメリア。
ミリア。
考えたくないのに。
考えてしまう。
◇
結局。
夜が明ける前に部屋を出た。
向かう先は一つ。
宰相府。
王城は静かだった。
まだ人も少ない。
窓の外は薄暗い。
◇
執務室へ通される。
しばらくして。
宰相が現れた。
「王太子殿下」
「確認したい」
挨拶もそこそこだった。
宰相は落ち着いている。
いつも通り。
全く動揺していない。
「アメリアの件だ」
「はい」
ルーカスは真っ直ぐ見た。
「問題ないのだな」
宰相は即答する。
「問題ございません」
「証言は」
「ございます」
「調査は」
「完了しております」
「証拠は」
「確認済みにございます」
淀みがない。
本当に。
迷いもない。
自信すら感じる。
ルーカスは黙った。
理屈は通る。
説明も分かる。
だが。
納得できない。
「ミリアはどうしている」
気付けば聞いていた。
「お休みになられております」
「会えないのか」
「現在は」
現在は。
またその言葉だった。
「何故だ」
「ご心痛が激しいかと」
正論だった。
否定できない。
だが。
やはり引っ掛かる。
宰相は穏やかに微笑んだ。
「ご安心ください」
「全て適切に処理されております」
適切。
その言葉が妙に残った。
ルーカスは思い出す。
『そうですか』
アメリアの声。
適切に処理された人間の反応だろうか。
ふと思う。
そして。
すぐに打ち消した。
(考え過ぎだ)
証言もある。
調査も終わっている。
理由もある。
だから。
間違っていない。
そう自分に言い聞かせる。
だが。
胸の奥は重いままだった。
◇
話は終わる。
ルーカスは席を立った。
「宰相」
「はい」
「父上へ報告したい」
老人は頷いた。
「当然かと」
ルーカスは少しだけ安心する。
そうだ。
父王へ報告すればいい。
父王は経験豊富だ。
何かあれば指摘してくれる。
問題がなければそれでいい。
◇
部屋を出る。
その足で謁見申請を出した。
そして。
待つ。
しばらくして。
返答が来た。
ルーカスは文官を見る。
「陛下はご多忙につき」
文官が頭を下げる。
「本日の謁見は難しいとのことです」
ルーカスは固まった。
珍しい。
父王は忙しい。
それは事実だ。
だが。
今回の件は王家の問題だ。
婚約破棄。
公爵家。
王太子。
軽い話ではない。
なのに。
会えない。
小さな違和感がまた一つ増えた。
窓の外を見る。
夜明けだった。
空が白くなり始めている。
(何かがおかしい)
また同じ結論だった。
「もう一度謁見を申し込んでくれ」
「……承知しました」
お読み頂き、ありがとうございます。




