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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ルーカス①

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第二話 もう一度謁見を申し込んでくれ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 夜明け前だった。

 ルーカスは眠れなかった。


 婚約破棄。

 アメリア。

 ミリア。


 考えたくないのに。

 考えてしまう。



 結局。

 夜が明ける前に部屋を出た。


 向かう先は一つ。


 宰相府。


 王城は静かだった。

 まだ人も少ない。

 窓の外は薄暗い。



 執務室へ通される。


 しばらくして。

 宰相が現れた。


「王太子殿下」


「確認したい」


 挨拶もそこそこだった。


 宰相は落ち着いている。


 いつも通り。

 全く動揺していない。


「アメリアの件だ」


「はい」


 ルーカスは真っ直ぐ見た。


「問題ないのだな」


 宰相は即答する。


「問題ございません」


「証言は」

「ございます」


「調査は」

「完了しております」


「証拠は」

「確認済みにございます」


 淀みがない。

 本当に。


 迷いもない。

 自信すら感じる。


 ルーカスは黙った。


 理屈は通る。

 説明も分かる。


 だが。

 納得できない。


「ミリアはどうしている」


 気付けば聞いていた。


「お休みになられております」


「会えないのか」


「現在は」


 現在は。

 またその言葉だった。


「何故だ」


「ご心痛が激しいかと」


 正論だった。

 否定できない。


 だが。

 やはり引っ掛かる。


 宰相は穏やかに微笑んだ。


「ご安心ください」


「全て適切に処理されております」


 適切。


 その言葉が妙に残った。


 ルーカスは思い出す。


『そうですか』


 アメリアの声。


 適切に処理された人間の反応だろうか。


 ふと思う。


 そして。

 すぐに打ち消した。


(考え過ぎだ)


 証言もある。

 調査も終わっている。

 理由もある。


 だから。

 間違っていない。


 そう自分に言い聞かせる。


 だが。

 胸の奥は重いままだった。



 話は終わる。


 ルーカスは席を立った。


「宰相」


「はい」


「父上へ報告したい」


 老人は頷いた。


「当然かと」


 ルーカスは少しだけ安心する。


 そうだ。

 父王へ報告すればいい。


 父王は経験豊富だ。

 何かあれば指摘してくれる。


 問題がなければそれでいい。



 部屋を出る。

 その足で謁見申請を出した。


 そして。

 待つ。


 しばらくして。

 返答が来た。


 ルーカスは文官を見る。


「陛下はご多忙につき」


 文官が頭を下げる。


「本日の謁見は難しいとのことです」


 ルーカスは固まった。


 珍しい。


 父王は忙しい。

 それは事実だ。


 だが。

 今回の件は王家の問題だ。


 婚約破棄。

 公爵家。

 王太子。


 軽い話ではない。


 なのに。

 会えない。


 小さな違和感がまた一つ増えた。


 窓の外を見る。

 夜明けだった。


 空が白くなり始めている。


(何かがおかしい)


 また同じ結論だった。


「もう一度謁見を申し込んでくれ」


「……承知しました」

お読み頂き、ありがとうございます。

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