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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ルーカス①

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第一話 誰の指示だ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 卒業記念パーティーは終わった。


 会場を出た後も。

 ルーカスの足取りは重かった。


 理由は分からない。


 いや。

 分かっているはずだった。


 婚約破棄。

 アメリアの断罪。

 ミリアの救済。


 全て終わった。


 そう思っていた。



 夜風が吹く。

 ルーカスは廊下を歩いていた。


 誰もいない。

 静かだった。


 思い出す。

 最後の光景を。


『私は君との婚約を破棄する!』


 自分の声。


『そうですか』


 アメリアの声。


 静かだった。


 本当に。

 驚くほど。


 怒らなかった。

 反論もしなかった。

 否定さえしなかった。


(何故だ)


 足が止まる。

 窓の外を見る。


 王都の灯りが見えた。


 自分なら怒る。


 当然だ。

 いきなり婚約破棄された。


 しかも大勢の前で。


 だが。

 アメリアは違った。


『そうですか』


 それだけ。


 まるで。

 婚約破棄そのものには興味が無いように。

 そんな反応だった。


(考えすぎか)


 首を振る。


 そうだ。

 考えすぎだ。


 証言もあった。

 報告も受けている。

 調査もされた。


 だから。

 自分は間違っていない。


 そのはずだった。


 だが。

 違和感だけは消えない。


 気付けば。

 別のことを考えていた。


 ミリアのことだった。


 大丈夫だろうか。


 かなり混乱していた。


 当然だ。

 あの場にいたのだから。


 会って話したい。

 そう思った。


 ルーカスは方向を変える。

 そのままミリアのいる部屋へ向かった。



 扉の前には護衛が立っていた。


「殿下」


「ああ」


「ミリアに会いたい」


 護衛が一瞬だけ困った顔をした。


「申し訳ございません」


「何だ」


「現在、面会は控えるよう指示が出ております」


 ルーカスは眉を寄せた。


「誰の指示だ」


「宰相府より」


 宰相府。


 別に不自然ではない。

 混乱しているのだろう。

 休ませたいのだろう。


 理屈は分かる。


 だが。

 やはり引っ掛かる。


「そうか」


 それ以上は言わなかった。

 言う理由もない。


 だが。

 何となく気分が悪かった。



 来た道を戻る。

 王城は静かだった。


 途中。

 ふと思う。


 父王にも報告しておくべきだと。


 婚約破棄。

 アメリア。

 ミリア。


 これだけのことが起きた。


 本来なら。

 報告は必要だ。


 だが今は夜だ。

 さすがに遅い。


 明日の朝。

 謁見を申し込もう。


 そう決める。


 父王なら分かるかもしれない。


 この違和感の正体を。



 そして。

 ルーカスはまだ知らない。


 その頃。

 別室で。


 ミリアが眠れない夜を過ごしていることを。


 そして。


 翌朝。

 全てがさらに悪い方向へ動き出すことを。


 まだ知らなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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