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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ミリア②

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第七話 信じています

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 それから数日が過ぎた。


 状況は何も良くならなかった。


 むしろ。

 悪くなっているように見えた。



 ルーカスは忙しくなった。


 王城も騒がしい。


 文官達が走る。

 騎士達も慌ただしい。


 何かが起きている。


 それだけは分かった。


 だが。

 誰も教えてくれない。



 アメリア様は戻らない。


 会えない。


 話も聞けない。


 生きているのか。

 元気なのか。


 それすら分からなかった。



 ミリアは窓の外を見る。


 王都の空だった。


 遠い。


 本当に遠かった。


(何も出来ませんね)


 小さく笑う。


 情けなかった。

 悔しかった。


 あの日。

 勇気を出した。


 逃げないと決めた。


 ルーカスにも会った。

 伝えたいことも伝えた。


 それでも。

 何も変わらない。



 無力だった。


 本当に。



 昼過ぎ。


 廊下から声が聞こえる。


 文官達だった。


「またですか」


「今度は財務局らしい」


「信じられん」


 通り過ぎていく。


 ミリアには意味が分からない。


 財務局。


 何の話だろう。


 だが。

 似たような話は増えていた。


 財務局。

 物資管理局。

 倉庫。

 契約書。


 そんな単語ばかり聞こえる。


 そして。

 何度か。

 同じ言葉も聞いた。


「旧監査局」


 その言葉だけは覚えていた。


 アメリア様が送られた場所だから。



 夕方。


 侍女がお茶を持ってくる。


 少しだけ。

 いつもより表情が明るい。


「何かございましたか」


 ミリアが聞く。


 侍女は少し迷った。


 そして。


「不正が見つかったそうです」


 不正。


「何のですか」


「分かりません」


 侍女は首を振る。


「ただ」


 一拍。


「旧監査局から報告が来ているそうです」


 ミリアは固まった。


 旧監査局。


 つまり。

 アメリア様がいる場所。


(あ)


 胸の奥で。

 何かが軽くなる。


 分かってしまった。


 何となく。


 でも。

 確信に近い形で。



 アメリア様は大丈夫だ。



 根拠は無い。

 何も無い。


 ただ。

 あの人だから。


 ミリアは思い出す。


 図書館。

 窓際の席。

 紅茶。

 本。


 そして。

 静かな横顔。


 あの人は。

 負けない。


 泣き寝入りしない。


 誰かを恨んで動く人でもない。


 きっと今も。

 どこかで。

 静かに。


『お仕事ですわね』


 と言っている。


 そんな気がした。


 思わず笑った。

 少しだけ。


 周囲は大騒ぎだ。


 ルーカスも苦しんでいる。

 王城も混乱している。

 貴族達も騒いでいる。


 だが。

 アメリア様だけは。


 きっといつも通りだ。



 数日後。

 さらに大きな報せが届く。


 旧監査局の調査。

 不正発覚。

 摘発。


 その言葉が王城を駆け巡る。


 ミリアには内容は分からない。


 政治も分からない。

 権力争いも分からない。


 それでも。

 一つだけ分かった。


 アメリア様は動いている。


 そして。

 ようやく安心できた。


 自分は無力だ。

 何も出来ない。

 助けに行くことも出来ない。

 状況を変えることも出来ない。


 それでも。

 信じることは出来る。


 ミリアは窓の外を見る。


 夕暮れだった。

 赤く染まる空。


 そして。

 小さく呟く。


「信じています」


 アメリア様。


 その言葉だけが。

 静かな部屋へ残った。

お読み頂き、ありがとうございます。

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