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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ミリア②

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第五話 私が言わなければなりません

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 朝だった。

 ほとんど眠れなかった。


 夜明け前まで考えていた。


 アメリア。

 婚約破棄。

 ルーカス。


 何一つ理解できない。


 だが。

 一つだけ分かる。


 あの告発は違う。


 それだけは。

 絶対に。



 ミリアは立ち上がる。


 決めていた。


 今日。

 ルーカスへ会う。


 説明しなければならない。


 アメリアは違う、と。


 自分はそんなことを頼んでいない、と。



 扉が叩かれる。


「失礼いたします」


 侍女だった。


 だが。

 顔色がおかしい。


 青ざめている。


 嫌な予感がした。


 本当に。

 嫌な予感が。


「何かございましたか」


 侍女は一瞬迷う。


 そして。

 静かに告げた。


「アメリア・フォン・アルフォード嬢が拘束されました」


 思考が止まった。


 拘束。


 意味を理解できない。

 理解したくない。


「……拘束?」


 声が出た。

 自分の声とは思えない。


「現在、旧監査局施設……現在は要人収容所である監獄へ移送されたとのことです」


 ミリアは立ち尽くした。


 旧監査局。


 要人収容所。


 監獄。


 罪人が送られる場所。



 違う。


 違う。


 違う。


 そんなはずがない。



「あの方は」


 声が震える。


「あの方は何も」


 最後まで言えなかった。



 侍女も何も言わない。


 言えないのだろう。



 静寂だけが残る。



 ミリアの脳裏に浮かぶ。


 図書館。


 窓際。


 紅茶。


 静かな笑顔。



『責任は個人にございます』



 あの日の言葉。


 あの日の声。


 あの日の教室。



 自分を守ってくれた人。


 助けてくれた人。


 感謝したかった人。



 その人が。


 牢へ入れられた。


 自分の名前を理由に。



 胸が苦しくなる。


 息ができない。



 涙が出る。


 止まらない。



 だが。


 次の瞬間。


 別の感情が生まれた。



 怒りだった。



 初めてだった。


 こんな気持ちは。



 怖かった。


 泣いていた。


 逃げようとしていた。


 今までずっと。



 でも今は違う。



「違います」


 侍女が顔を上げる。



「違います」


 もう一度言った。


 今度ははっきりと。



「アメリア様は違います」



 侍女は黙った。



「私はそんなこと頼んでいません」



 声が震える。


 涙も止まらない。


 それでも。


 止まれなかった。



「私が言わなければなりません」



 立ち上がる。


 椅子が倒れる。



「ミリア様」


 侍女が慌てる。



 だが。

 止まらない。



「ルーカス様に会わせてください」



 今すぐ。


 会わなければならない。



 伝えなければならない。



 あの人は違う。


 自分を助けてくれた。


 守ってくれた。


 責めるべき人ではない。



 だから。


 ミリアは廊下へ飛び出した。



 もう逃げない。


 そう決めたから。



 そして。


 まだ知らない。


 ルーカス自身も。


 既に後戻りできない場所まで来てしまっていることを。

お読み頂き、ありがとうございます。

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