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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ミリア②

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第四話 逃げてはいけない。

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 パーティーが終わった。


 終わったはずだった。


 だが。

 ミリアには何も分からなかった。


 婚約破棄。

 告発。

 アメリア。

 ルーカス。


 全部。


 何一つ理解できないまま。


 ミリアは王城の一室へ案内されていた。



「こちらでお待ちください」


 侍女が頭を下げる。


 扉が閉まる。


 静かになる。


 広い部屋だった。


 立派な調度品。

 高価そうな絨毯。

 柔らかな椅子。


 だが。

 落ち着かなかった。


 全く。



 数分経つ。

 誰も来ない。


 さらに数分。

 やはり来ない。


 窓の外を見る。

 夜だった。


 卒業式の日。


 本来なら。

 幸せな一日だったはずだ。


(アメリア様……)


 自然と名前が浮かぶ。


 最後に見た姿。


 静かだった。


 怒りも。

 悲しみも。

 見えなかった。


 だから逆に怖かった。



 ノックの音。


 ミリアは立ち上がる。


「失礼いたします」


 侍女だった。


「お食事をお持ちしました」


「ありがとうございます」


 だが。

 知りたいのはそれではない。


「アメリア様は」


 気付けば口にしていた。


 侍女の動きが僅かに止まる。


「現在確認中でございます」


 答えだった。


 答えになっていない答え。


「ではルーカス様は」


「現在お会いになれません」


 即答。


 ミリアは黙った。


 おかしい。


 本当に。

 おかしい。


 誰も何も教えてくれない。


 説明もない。

 事情も分からない。


 ただ。

 ここで待てと言われる。



 侍女が去る。


 再び静寂。


 ミリアは椅子へ座った。


 食事には手を付けない。


 そんな気分ではなかった。


 嫌な考えが浮かぶ。


 何度も。

 自分のせいなのではないか。


 自分がいたから。

 ルーカスが婚約破棄をした。


 自分がいたから。

 アメリアが告発された。


 だが。

 首を振る。


 違う。

 それは違う。


 少なくとも。

 あの告発だけは違う。


 ミリアは知っている。


 アメリアはそんな人ではない。


 机に置かれた紅茶を見る。


 ふと。

 アメリアの姿を思い出した。


 図書館。

 窓際。

 紅茶。

 本。


『責任は個人にございます』


 あの日の言葉が浮かぶ。


 静かな声。


 優しいわけではない。

 甘いわけでもない。


 ただ。

 正しかった。


 だから。

 ミリアは思う。


 逃げてはいけない。


 今度は自分が。

 動かなければならない。



 どれくらい経っただろう。


 再び扉が開く。


 今度は別の侍女だった。

 少しだけ顔色が悪い。


 それが気になった。


「何かございましたか」


 侍女は迷う。

 少しだけ。


 そして。


「王城内が少々騒がしくなっております」


 それだけ言った。


 騒がしい。


 その言葉だけで十分だった。


 事態は終わっていない。


 むしろ。

 始まったばかりだ。



 夜は長かった。


 眠れなかった。


 何度も。

 何度も。


 アメリアの顔を思い出した。


 最後に見た。

 あの静かな表情を。


 そして。

 ミリアは決める。


 明日。


 ルーカスに会おう。

 会わなければならない。


 自分の口で。

 伝えなければならない。


 アメリアは違う、と。


 あの人は。

 自分を守ってくれた人だ、と。



 まだ知らない。


 翌日。


 その決意より先に。

 さらに残酷な知らせを聞くことになることを。


 ミリアはまだ知らなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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