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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章幕間ミリア②

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第二話 アメリア様らしかった。

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 卒業式が終わった。

 そして夕方。


 王城。

 王立学園最後の催し。

 卒業パーティーが始まる。



 会場は華やかだった。


 音楽。

 料理。


 談笑する卒業生達。

 教師達もいる。

 保護者達もいる。


 学園生活最後の夜。



 ミリアは少しだけ落ち着かなかった。


 豪華すぎる空間が苦手なのだ。


 もともと男爵令嬢。

 こういう場所には慣れていない。


「ミリア様」


「ごきげんよう」


 それでも。

 以前よりはずっと自然に話せる。


 侯爵令嬢。

 伯爵令嬢。


 以前なら近付くことも出来なかった人達。


 今は違う。


 笑いながら会話できる。


 挨拶も返ってくる。

 普通に接してくれる。


 嬉しかった。

 本当に。


「楽しそうですわね」


 振り向く。


 アメリア様だった。


 銀髪。

 赤い瞳。


 いつも通り。

 完璧な令嬢。


「アメリア様」


 自然に頭を下げる。


「卒業おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 少しだけ嬉しくなる。


 ずっと話したかった。

 でも機会がなかった。


「アメリア様も、ご卒業おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 やはり変わらない。


 穏やか。

 静か。

 落ち着いている。


 ミリアは少し迷う。


 そして。

 勇気を出した。


「以前のお礼を申し上げたくて」


 アメリアが首を傾げる。


「お礼、ですか?」


 本気で分かっていない。


 ミリアは思わず笑いそうになった。


「私を助けてくださいました」


 すると。

 アメリアは少し考える。


 本当に少しだけ。


「嫌がらせの件でしょうか」


「はい」


 アメリアは頷いた。


「当然のことをしただけですので」


 当然。


 その言葉が。

 いかにもアメリアらしかった。


「ですが私は助かりました」


 そう言うと。

 アメリアは少し困ったような顔をした。


「それは良かったですわ」


 たぶん。

 本心だ。


 飾らない。

 見返りも求めない。


 本当に。

 不思議な人だと思った。


 その時。


「アメリア」


 声が掛かった。


 ルーカスだった。


 ミリアの表情が自然と緩む。


「ルーカス様」


 ルーカスは二人を見て笑った。


 だが。


 ミリアは少しだけ違和感を覚えた。


 何だろう。


 少し。

 いつもと違う。


「どうかなさいましたか?」


 尋ねる。


 ルーカスは一瞬だけ目を逸らした。


「何でもない」


 そう言う。


 だが。

 何でもないようには見えなかった。


 落ち着かない。


 考え事をしている。


 何かを決意している。


 そんな感じ。


 ミリアは少し不安になった。


 だが。

 理由は分からない。


「失礼いたします」


 アメリア様が去っていく。


 ミリアはその背中を見送った。


 相変わらずだった。


 卒業パーティーなのに。

 特別浮かれた様子もない。


 少し歩いた先で。

 友人令嬢達に捕まる。


 何か話している。


 アメリア様は聞いている。


 時々返事をする。


 そして。

 ミリアは気付いた。


 アメリア様。

 少しだけ疲れている。


 笑顔はいつも通り。


 でも。

 なんとなく。


 早く帰りたそうだった。


(ふふ)


 少しだけ笑う。


 たぶん。

 図書館へ行きたいのだろう。


 本を読みたいのだろう。


 そんな気がした。


 本当に。


 アメリア様らしかった。



 夜は更けていく。


 卒業生達は語り合う。


 将来。

 夢。

 進路。

 未来。


 希望に満ちた夜。


 本来なら。

 忘れられない思い出になるはずだった。


 ミリアもそう思っていた。


 だから。

 気付かなかった。


 会場の空気が。

 少しずつ変わっていることに。


 誰かが待っている。


 何かが始まろうとしている。


 そんな。

 説明できない違和感に。


 そして。


 会場の中央。


 ルーカスがゆっくり立ち上がった。


 ミリアは首を傾げる。


 何か挨拶だろうか。

 卒業の言葉だろうか。


 そんなことを考える。


 だからまだ知らない。


 この直後。


 自分の人生も。

 ルーカスの人生も。

 アメリアの人生も。

 そして王国そのものも。


 大きく動き始めることを。

お読み頂き、ありがとうございます。

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