表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第四章幕間レイ①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/180

第七話 ありがとう

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 最近。

 アメリアが少し変だ。


 レイはそう感じていた。


 会話が減った。

 交流会も減った。


 図書館へ行っても。


「失礼いたします」


 どこかへ行く。

 生徒会室へ行く。


 別の予定がある。


 また別の日。

 気付けばいない。


「忙しいのか?」


 そう聞くと。


「少々」


 とだけ返ってくる。


 少々ではない気がした。



◇学園


 ある日の昼休み。


 レイは奇妙な光景を見る。


 お茶会。


 中心にいたのは。

 伯爵令嬢セシリア。


 東方文化研究会所属。

 成績優秀。

 語学も堪能。


 そこへ。

 アメリアが現れる。


 少しだけ話す。


 笑顔。

 そして去る。


 不思議だった。


 もっと不思議なのは。


 数日後。

 同じ光景を何度も見ること。



◇図書館


「アメリア嬢」


「何でしょう」


 捕まえた。


 最近かなり難しい。


 何故だろう。

 以前より忙しそうだ。


「最近忙しいな」


「そうでしょうか」


「そうだ」


「気のせいかと」


 気のせいではない。


 だが本人は本気だった。


 本気で。

 全く自覚がない。


「ところで」


 アメリアが口を開く。


「セシリア様はご存知ですか」


 突然だった。


「伯爵令嬢だな」


「東方文化に詳しい方です」


「そうだったな」


「優秀な方ですわ」


 妙に熱心だった。


 珍しい。


 アメリアが他人を褒めるのは。


 いや。

 正確には違う。


 評価している。


 という感じだった。


 会計報告書を見るように。

 人事査定をするように。


 淡々と。

 客観的に。



◇さらに数日後


 交流会。


 セシリアと話す。


 東方文化。

 交易史。

 学術。


 話が合う。


 驚くほど。


「面白い方ですね」


 セシリアが笑う。


「君もだ」


 自然だった。


 会話が。

 居心地も悪くない。


 むしろ良い。


 そして。

 少し離れた場所。


 アメリアがいた。


 紅茶を飲んでいる。


 静かに。

 平和そうに。

 いつものように。


 レイは少しだけ違和感を覚えた。


(あれ)


 何だろう。

 何かがおかしい。

 何か。


 妙に。

 満足そうだった。


 理由が分からない。



◇一ヶ月後


「レイ殿下」


「ん?」


 気付けば。

 セシリアと頻繁に話すようになっていた。


 談笑。

 研究会。

 お茶会。

 交流会。


 自然だった。


 無理がない。


 そして。

 楽しい。


 それも事実だった。


 ある日。

 ふと尋ねた。


「そういえば」


「はい」


「最初に紹介したのは」


「アメリア様ですね」


 やはりそうだった。

 セシリアは笑う。


「アメリア様には感謝しております」


 レイも頷いた。


 本当に。

 感謝している。


 その時は。



◇二ヶ月後


 東方連盟帰国前。


 偶然。

 生徒会室前を通る。


 扉は少しだけ開いていた。


『成功だな』


 誰かの声。


『成功でしたね』


 別の声。


 何の話だろう。


 気になった。


 少しだけ。

 そして聞こえた。


『東方皇子問題』


 沈黙。


 レイも沈黙した。


『綺麗に解決した』


『アメリア嬢らしい』


『仕事減らしたかったんだろうな』


 沈黙。


 長い沈黙。


 そして。


 レイは。

 理解した。


 全部。


 歓迎会。

 相談。

 交流会。

 セシリア紹介。


 その全てを。



◇数分後


 図書館。


 いつもの席。


 アメリアがいた。


 本。

 紅茶。

 静寂。


 幸せそうだった。


 本当に。

 幸せそうだった。


「アメリア嬢」


「何でしょう」


 顔を上げる。


 いつもの笑顔。


 レイは少し笑った。


「ありがとう」


「?」


 本気で分かっていない。

 やはりそうだった。


「いや」


 首を振る。


「何でもない」


 アメリアは首を傾げた。


 数秒後。

 興味を失ったように本へ戻る。


 レイは見ていた。

 その横顔を。


 そして認める。

 敗北を。


 王族としてでも。

 男としてでもない。


 もっと意味不明なものに。

 自分は負けた。


 アメリア・フォン・アルフォードの。


『仕事を減らしたい』


 という、


 あまりにも強固な信念に。


 だから。

 最後に笑った。


「やはり」


 小さく呟く。


「面白い人だ」


 アメリアは聞いていない。


 聞いていたとしても。

 きっとこう返しただろう。


『そうでしょうか』


 と。


 本気で不思議そうに。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ