第三話 不思議な人だな
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
留学が始まって一週間。
レイは一つの結論に辿り着いていた。
アメリア・フォン・アルフォードは優秀である。
それについては疑いようがない。
歓迎行事。
施設案内。
歴史説明。
交流会。
全て完璧だった。
東方連盟と王国。
文化の違い。
宗教の違い。
政治制度の違い。
説明も分かりやすい。
知識も深い。
質問にも即答する。
ここまでは良い。
問題は別にあった。
(何かがおかしい)
本当に小さな違和感。
だが確実に存在する。
◇歓迎行事最終日
「こちらが学園図書館です」
アメリアが説明する。
「蔵書数は王国内でも上位です」
「なるほど」
「東方関連書籍もございます」
「見てみたいな」
「案内いたします」
自然だった。
しかし。
レイは一つ気付く。
この令嬢。
楽しそうではない。
別に嫌そうでもない。
退屈そうでもない。
だが。
嬉しそうでもない。
それが不思議だった。
(歓迎担当だろう)
普通なら。
外国皇子との交流。
名誉。
実績。
評価。
色んなものが付いてくる。
だがアメリアにはそれが見えない。
淡々としている。
本当に淡々と。
◇昼食会
「東方料理もご用意しております」
「詳しいな」
「王妃教育ですので」
また出た。
王妃教育。
便利な言葉だった。
だが。
レイは知っている。
知識は詰め込める。
しかし。
理解は違う。
アメリアは理解している。
交易の意味。
文化摩擦。
宗教観。
それら全部を。
単なる暗記ではない。
それなのに。
「凄いな」
「そうでしょうか」
褒めても反応が薄い。
本気で不思議そうだった。
演技ではない。
そこまで見抜けないほど。
レイも甘くない。
◇帰り道
歓迎行事終了。
本来なら。
ここで終わる。
そう思った。
だが。
「アメリア嬢」
「何でしょう」
ふと呼び止める。
理由は特に無い。
少し話してみたかっただけだ。
「王国は好きか」
「好きですわ」
即答。
「何故だ」
少し興味があった。
家族。
故郷。
文化。
そういう答えを予想していた。
だが。
アメリアは少しだけ考えた。
そして。
「慣れておりますので」
そう答えた。
「……それだけか」
「他にございますか?」
本気で聞いている。
レイは思わず笑った。
「いや」
何だろう。
変だ。
変なのだ。
王族も見た。
貴族も見た。
優秀な人間もたくさん見た。
だが。
アメリアはどこか違う。
野心がない。
権力欲がない。
競争心も薄い。
名誉欲も感じない。
では何を求めているのか。
分からない。
理解できない。
だから。
少しだけ。
もっと知りたくなった。
◇その夜
レイは自室で考える。
机の上には王国関係の資料。
だが。
気付けば。
アメリアのことばかり考えていた。
「不思議な人だな」
ぽつりと呟く。
普通なら。
評価されたい。
褒められたい。
認められたい。
何かしら見える。
だが。
アメリアからは見えない。
まるで。
別の目的で動いているような。
そんな違和感。
そして。
その違和感の正体を。
レイはまだ知らない。
お読み頂き、ありがとうございます。




