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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第四章幕間レイ①

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第二話 君は本当に学生か?

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 王国へ到着した翌日。

 歓迎会が開かれた。


 王族。

 高位貴族。

 学園関係者。

 外交官。


 顔触れは豪華だった。


 だが。

 レイの興味は一人に向いていた。


 アメリア・フォン・アルフォード。


 王太子婚約者。

 公爵令嬢。

 王国期待の才女。


 報告書ではそうなっている。


(さて)


 レイはワイングラスを持ちながら考える。


(どこまで本当かな)


 こういう話は誇張される。

 王族の周囲では特に。


 優秀。

 聡明。

 完璧。


 そんな評価ほど信用できないものはない。


 人間は人間だ。


 必ず欠点がある。


 だから。

 会うまでは判断しない。


 それがレイのやり方だった。


 その時。


「アメリア・フォン・アルフォードにございます」


 声が聞こえた。


 レイは視線を向ける。


 公爵令嬢。


 長い銀髪。

 整った礼装。

 非の打ち所のない所作。


 だが。

 レイが驚いたのはそこではない。


「初めてお目にかかります」


 東方語だった。


 発音も綺麗だった。


 レイの眉が僅かに上がる。


「東方語を話せるのか」


「簡単なものでしたら」


 謙遜。


 だが。

 今の一言だけで分かる。


 簡単なものではない。


 かなり話せる。


 少なくとも。

 貴族の社交辞令レベルではない。


(面白い)


 少しだけ興味が湧いた。


「長旅、お疲れ様でございました」


「感謝する」


「歓迎会のお料理には東方の香辛料を使用しております」


「ほう」


「本国とは異なるかと思われますが」


 自然だった。


 会話が。


 無理がない。

 置いていかれない。

 相手を立てる。


 それでいて。

 へりくだりすぎてもいない。


 絶妙だった。


 レイは観察する。


 反応。

 視線。

 呼吸。

 言葉選び。


 慣れている。


 間違いなく。


 王族相手でも。

 外国の皇子相手でも。


 全く緊張していない。


(優秀だな)


 素直に思った。


 しかし。


 何かがおかしい。

 言葉にはできない。

 妙な違和感。


 それがずっと残る。


 会話は続く。


 東方文化。

 交易。

 歴史。

 学術。


 どの話題にも付いてくる。


 しかも理解が深い。


 表面的ではない。


 知識だけなら覚えられる。


 だが。

 背景を理解している。


「そこまで学んだのか」


「王妃教育ですので」


 即答だった。


 レイは少し困惑する。


 王妃教育

 便利な言葉だ。


 だが。


(そんな範囲か?)


 どう考えても違う。


 東方連盟について。

 自国の若手貴族より詳しい部分すらある。


 そこまで理解している人間を。

 レイはそう多く知らない。


 なのに。

 本人は全く誇らない。


 自慢しない。

 能力を見せつけない。

 評価も求めない。


「驚いた」


 思わず口に出た。


「何がでしょう」


「君は本当に学生か?」


 本音だった。


 学生ではない。


 宮廷実務官。

 外交官。

 文官。


 その類に見える。


 だが。


「学生ですが」


 返ってきたのは。

 本気で不思議そうな声だった。


 演技ではない。


 心からそう思っている。


 そう感じた。


(なるほど)


 レイは少しだけ笑う。


 優秀な人間は知っている。

 傲慢な人間も知っている。


 王族だから。

 嫌というほど見てきた。


 だが。

 このタイプは珍しい。


 能力がある。


 なのに。

 能力があることを気にしていない。


 そんな人間は少ない。


 歓迎会が進む。


 会話も終わる。


 だが。

 レイは確信していた。


 王太子より。

 男爵令嬢より。

 王国政治より。


 一番面白い存在は。


 おそらく。

 この公爵令嬢だ。


 そして。

 その予想は。


 数日後。

 さらに大きく裏切られることになるのであった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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