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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第三章幕間ミリア①

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第三話 アメリア様ってどんな方なのですか?

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 最初は小さな違和感だった。


 挨拶が返ってこない。

 それだけ。


 だから気にしなかった。


 お茶会で視線が合っても。

 何も言われない。


 だから気にしなかった。


 偶然だと思った。

 そう思いたかった。



「ごきげんよう」


 ミリアは廊下で頭を下げた。


 相手は伯爵令嬢。

 本来なら挨拶を返してくれる。


 はずだった。


 だが。

 伯爵令嬢は一瞬だけこちらを見る。


 そして。

 何も言わず通り過ぎた。


 まるで。

 最初から存在しないかのように。


 ミリアは立ち尽くす。


 何か失礼があっただろうか。


 思い当たらない。


 だが。

 最近こういうことが増えていた。



「ミリア」


 昼休み。

 聞き慣れた声。


 振り返る。


 ルーカスだった。


 その顔を見た瞬間。

 胸が痛む。


 嬉しい。


 でも。

 嬉しがってはいけない。


 そんな気がした。


「また会いに来た」


 ルーカスが笑う。


 周囲がざわつく。


 ミリアは視線を感じた。

 痛いほど。


 分かる。

 皆見ている。

 皆知っている。


 王太子だ。

 未来の国王だ。


 その隣に。

 男爵令嬢が立っている。


 面白くない人もいるだろう。


 当然だ。


「殿下」


 ミリアは小さな声で言った。


「もうやめましょう」


「何をだ」


「私と会うのをです」


 ルーカスは眉を寄せた。


 不機嫌そうだった。


「嫌だ」


 即答だった。

 ミリアは困る。


 そういうところなのだ。


 真っ直ぐで。

 諦めが悪い。


 だから好きになった。

 だから困る。


「俺は困らない」


「私は困ります」


「どうしてだ」


 ルーカスは本気で分かっていなかった。


 その瞬間。

 ミリアは少しだけ察した。


 この人は。

 王太子だからではない。


 元々こういう人なのだ。


 思ったことを真っ直ぐ言う。

 好きなら会いに来る。

 嫌なら怒る。


 正しいと思えば突き進む。


 だから。

 危うい。



 数日後。

 状況はさらに悪化した。


 教科書がなくなる。

 机に落書き。

 お茶会の招待が消える。


 小さな嫌がらせ。


 誰も証拠を残さない。

 誰も表立ってやらない。


 だから余計に怖い。


 ミリアは一人で耐えた。


 誰にも言わなかった。


 言えなかった。


 男爵令嬢だから。

 王太子に迷惑を掛けたくなかったから。


 そして。

 何より。


 アメリアに申し訳なかったから。



「アメリア様ってどんな方なのですか?」


 ある日。

 勇気を出して聞いてみた。


 相手は同じクラスの令嬢だった。


 一瞬。


 空気が変わる。


「アメリア様?」


「え、ええ」


 令嬢は目を丸くした。


 そして。

 少し考えた後。


「怖い方ではありませんわ」


 そう言った。


 ミリアは不思議だった。


 怖くない?


 婚約者だ。


 自分の存在を知れば怒るのではないか。

 恨むのではないか。


 そう思っていた。


 だが。


「むしろ逆ですわ」


 令嬢は苦笑する。


「怒っているところを見たことがありません」


 ミリアはさらに困惑する。


「そうなのですか?」


「ええ」


 一拍。


「たまに何を考えているのか分からなくなりますけれど」


 何故か皆頷く。


 ミリアだけが取り残された。



 そして。

 決定的な事件が起きる。


 昼休み。

 中庭。


 ルーカスが怒鳴った。


「もうやめろ!」


 大きな声。


 全員が振り返る。

 ミリアも振り返る。


 視線の先。

 銀髪の令嬢。


 アメリア・フォン・アルフォード。


 初めて見る。

 初めて近くで見る。


 美しかった。


 それ以上に。

 静かだった。


 そして。

 ルーカスは怒る。


「ミリアへの嫌がらせだ!」


 ミリアの顔から血の気が引いた。


 やめて。

 そう思った。


 やめてください。

 私のために争わないでください。


 そう叫びたかった。


 だが声が出ない。


 その時だった。


「何か証拠はございますか?」


 アメリアが聞いた。


 静かな声。


 怒っていない。

 責めてもいない。


 ただ。

 確認している。


 事実を。


 それだけ。


 ミリアは固まった。


 怒らないのだろうか。

 悲しまないのだろうか。

 腹を立てないのだろうか。


 自分ならそうする。


 でも。

 アメリアは違った。


 まるで。

 問題を解決しようとしている人のようだった。


 その姿を見た瞬間。

 ミリアは初めて思う。


 噂は。

 本当なのかもしれない。


 この人は。

 私の敵ではないのかもしれない。


 それは間違っていなかった。


 数日後。

 そのアメリア・フォン・アルフォードが。


 学園中の令嬢を集め。

 自分を守るために動いていたことを。


 誰よりも先に。

 ミリアが知ることになるのだから。

お読み頂き、ありがとうございます。

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