第六話 終わりが見えましたので
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
国境地帯。
乾いた風が吹いていた。
アメリア達は地図を囲んでいる。
「ここですわね」
アメリアが一点を指差した。
誰も聞いたことのない場所だった。
「廃鉱山?」
アルフレッドが眉をひそめる。
「はい」
「根拠は」
アメリアは机の上へ書類を並べた。
食料。
塩。
鉄。
馬。
武器。
全ての記録がそこへ向かっている。
「物資の終点ですわ」
静かな声だった。
「ですが鉱山は閉鎖されております」
外務省職員が言う。
「建前上は」
アメリアが答えた。
沈黙。
「実際には稼働していると?」
レイが聞く。
「恐らく」
アメリアは頷いた。
「確認に参ります」
即決だった。
◇翌日
調査隊は国境地帯へ向かった。
道は悪い。
人も少ない。
商隊も通らない。
だが。
「局長」
「何かしら」
「荷車の跡があります」
監査局員が声を上げる。
アメリアはしゃがみ込んだ。
轍を確認する。
新しい。
かなり新しい。
「定期的に使用されておりますわね」
廃鉱山ではあり得ない。
全員の表情が変わった。
さらに進む。
森を抜ける。
丘を越える。
そして。
「見えました」
騎士が声を上げた。
遠方。
岩山の陰。
巨大な施設が見える。
本来無人のはずの廃鉱山。
しかし。
煙が上がっていた。
「生活しているな」
レイが呟く。
人影も見える。
荷車もある。
搬入口もある。
見張りもいる。
「完全に拠点ですわね」
アメリアが断言した。
望遠鏡が回される。
騎士達。
軍人達。
全員が順番に確認する。
武器箱。
食料庫。
馬小屋。
宿舎。
規模が異常だった。
「何人いる」
アルフレッドが聞く。
軍の将校が観察する。
かなり長く。
「最低二百」
空気が固まる。
「多ければ三百を超えます」
小規模盗賊団ではない。
立派な武装組織だった。
「なるほど」
レイが小さく笑う。
「だから武器が消えたのか」
「はい」
アメリアは頷く。
武器。
食料。
塩。
鉄。
馬。
資金。
全てが繋がった。
「終点ですわね」
静かな声だった。
アルフレッドは大きく息を吐く。
「これで終わりか」
アメリアは首を振った。
「いいえ」
一拍。
「ここからですわ」
全員が見る。
「証拠は揃いました」
「資金経路も判明しております」
「物流も判明しております」
「拠点も発見いたしました」
そして。
「次は摘発ですわね」
その言葉に。
騎士団。
東方軍。
王国軍。
全員の雰囲気が変わる。
調査が終わった。
ここからは作戦である。
レイが地図を広げる。
「共同作戦になるな」
アルフレッドも頷いた。
「東方連盟と王国の合同作戦だ」
国際案件。
国際犯罪。
国境武装組織。
放置できる規模ではない。
作戦会議が始まる。
◇
一方。
アメリアは静かに資料を整理していた。
「局長」
監査局員が聞く。
「何かしら」
「この状況で落ち着いていますね」
アメリアは少し考えた。
本当に少しだけ。
そして答える。
「終わりが見えましたので」
監査局員達が震えた。
局長がそう言う時は。
大抵。
誰かの終わりだからである。
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