第四話 それだけは確実ですわね
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
翌日。
アメリア達は港湾地区を離れていた。
目的地は内陸。
物流の流れを追うためである。
「つまり」
アルフレッドが資料を見る。
「武器は消えている」
「はい」
「内部協力者もいる」
「はい」
「偽装も行われている」
「はい」
一拍。
「そこまで分かっていて犯人は分からんのか」
アメリアは首を振った。
「まだ証拠が足りませんわね」
監査は推測では行わない。
証拠で行う。
それが彼女の流儀だった。
◇
荷車が街道を進む。
王都方面。
国境方面。
各都市方面。
様々だった。
アメリアは黙って記録を取っている。
「局長」
「何かしら」
「何を見ているのですか」
監査局職員が聞いた。
アメリアは荷車を指差す。
「塩ですわ」
「塩?」
「塩です」
即答だった。
塩は重要だった。
生活必需品。
保存食の原料。
軍の補給品。
消耗品。
つまり大量に動く。
大量に動くものは誤魔化せない。
これも監査の基本である。
数日分の資料。
商会の取引記録。
税関記録。
倉庫搬出記録。
全部並べる。
そして。
「こちらですわね」
アメリアの指が止まった。
◇会議室
机の上には大量の紙。
全員の顔が疲れている。
アメリア以外。
アメリアだけ元気だった。
理由。
仕事だから。
「これは食料輸送です」
「うむ」
「こちらは塩」
「うむ」
「こちらは鉄」
「うむ」
「こちらは馬」
「うむ」
アルフレッドは頷く。
普通の物流だった。
どこにも問題はない。
ように見える。
「目的地をご覧くださいませ」
資料が並ぶ。
全員が見る。
そして。
沈黙。
食料。
国境。
塩。
国境。
鉄。
国境。
馬。
国境。
全部同じだった。
全て国境地帯へ集中している。
「偶然か?」
軍関係者が呟いた。
「違いますわね」
アメリアは即答した。
「量が多すぎます」
机を指で叩く。
「食料だけなら理解できます」
「塩だけでも理解できます」
「鉄だけでも理解できます」
「馬だけでも理解できます」
一拍。
「全部は理解できませんわ」
レイが目を細めた。
「軍隊だな」
静かな声だった。
部屋の空気が変わる。
外交問題。
国際問題。
その気配が濃くなる。
しかし。
アメリアは首を振った。
「そこまでは分かりません」
「何?」
レイが見る。
「軍隊かもしれません」
「武装組織かもしれません」
「盗賊団かもしれません」
「反乱軍かもしれません」
淡々としていた。
「現時点で分かるのは一つだけです」
資料を閉じる。
静かな音だった。
だが。
その場の全員は理解していた。
重大な発見だと。
「大量の物資が」
アメリアは言う。
「継続的に」
「計画的に」
「国境へ集められております」
一拍。
「それだけは確実ですわね」
◇会議終了後
アルフレッドが窓の外を見る。
遥か先。
国境方面。
資料通りなら。
そこに何かがある。
「局長」
「何かしら」
「大きな話になりそうだ」
アメリアは頷いた。
否定しない。
珍しかった。
彼女は机の上の資料を整理する。
武器。
塩。
食料。
鉄。
馬。
全て一本の線で繋がり始めていた。
アメリアは小さく呟く。
「さて」
一拍。
「資金はどこから出ておりますの?」
次に追うべきものは決まっていた。
物資の先。
ではない。
金の流れだった。
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