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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第七章 外交問題編

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第二話 ……妙ですわね

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 東方連盟へ向かう道中。


 アメリアは不機嫌だった。


 本当に珍しく。

 かなり不機嫌だった。


 理由は単純。


 暇だから。


「局長」


「何かしら」


「顔が怖いです」


 監査局職員が震えていた。


 仕方ない。


 アメリアの機嫌が悪い。


 非常に珍しい事態だった。



 今回の調査団は大所帯である。


 外交官。

 軍部。

 監査局。

 教会騎士団。


 人数が多い。


 結果。

 会議が多い。

 移動が多い。

 待機時間も多い。


 そして。

 仕事が少ない。


 アメリアにとって最悪だった。



◇国境付近の宿場町


 調査団は半日休憩となった。


 外交官達は観光。

 軍人達は休憩。


 商人達は市場を楽しんでいる。


 一方。

 アメリアは市場にいた。


「局長」


「何かしら」


「何をなさっているのですか」


 監査局職員が聞く。


「市場調査ですわ」


 当然だった。


「休憩では?」


「休憩ですわ」


 市場価格を確認している。

 物流も見ている。

 倉庫まで調べている。


 どこにも休憩要素が無かった。



◇昼食


 東方風の料理が並ぶ。

 調査団は盛り上がっていた。


「美味いな」


「さすが本場だ」


「これは素晴らしい」


 席の一角。


「どうだ?」


 アルフレッドが聞く。


「何がでしょう」


「料理だ」


「料理ですわね」


「どうだ?」


 アメリアは少し考える。

 本当に少しだけ。


「塩の流通が安定しておりますわね」


 沈黙。


「そこか」


「そこです」


 即答だった。



 さらに数日後。

 調査団は東方連盟へ到着した。


 巨大な港。

 巨大な市場。

 巨大な倉庫群。


 王国とは規模が違う。


 そこで一人の男が出迎えた。


「久しぶりだな」


 聞き覚えのある声。


 東方連盟第三皇子。

 レイ・シェンだった。


「ご機嫌よう」


 アメリアは礼をする。


 完璧だった。


 レイは苦笑する。


「相変わらずだな」


「何がでしょう」


「全部だ」


 全部らしい。


 よく分からなかった。



 その夜。

 歓迎会が開かれた。


 外交官達。

 商人達。

 貴族達。


 皆楽しそうだ。

 

 アメリアは壁際にいた。


 資料を読んでいた。


「何をしている」


 レイが呆れながら聞く。


「調査ですわ」


「歓迎会だぞ」

 

「存じております」


 資料を閉じない。


 レイは天井を見上げた。


 本当に変わらない。


 昔からずっと。



 深夜。

 宿舎。


 アメリアは輸送記録に目を通していた。


 武器搬入記録。

 倉庫保管記録。

 搬出記録。

 受領記録。


 一枚。

 二枚。

 三枚。


 十枚。


 そして。


 ぴたり。


 手が止まった。



「局長?」


 監査局職員が顔を上げる。


 アメリアは資料を見ている。


 もう一度見る。


 さらに見る。


 そして。


「……妙ですわね」


 静かな声だった。


 数字は合っている。

 帳簿も合っている。

 輸送記録も合っている。


 だが。

 在庫だけが違う。


 ほんの僅かに。

 本当に僅かに。


 普通なら見逃す程度に。


 しかし。

 アメリアは見逃さない。


「数量が合いませんわね」


 資料を閉じる。


 監査局職員達が顔を見合わせる。


 嫌な予感しかしなかった。


 本当に。

 全く。


 良い予感がしない。


 アメリアは静かに微笑んだ。

 本当に静かに。


「どうやら」


 机の上に資料を並べる。


「武器横流し疑惑は」


 一拍。


「疑惑ではなさそうですわね」

お読み頂き、ありがとうございます。

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