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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第六章 王太子編

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終話 以前よりは遥かに良くなりました

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 アメリアは報告書を書いていた。


 監査局長。

 それが今の肩書きだった。


 気に入っている。

 非常に。


 余計な社交が少ない。

 数字が多い。

 平和。


 理想的だった。


 そして今。

 机の上には一冊の資料。


『王太子業務改善状況 最終報告』


 アメリアは最後のページを書き終える。


 半年。

 長かった。

 本当に。


 有害物質の改善記録など。

 二度とやりたくない。


 心からそう思った。


◇王城


 会議室。


 国王。

 第二王子アルフレッド。

 ルーカス。

 重臣達。


 そしてアメリア。


 珍しい顔触れだった。


「それで」


 国王が言った。


「結果はどうだ」


 誰もがアメリアを見る。

 本人だけが平常運転だった。


「提出いたします」


 どさり。


 報告書。


 全員が嫌な予感を覚える。


 アメリアの報告書で幸せになった人間は少ない。

 本当に少ない。


 評価


「まず以前の評価です」


 ページを開く。


 低い。

 非常に。


 ルーカスが死んだ目になる。


 見覚えがある。

 痛いほど。


「不要では」


「必要です」


 即答だった。

 逃がさない。


 監査だから。


「続いて現在です」


 ページが変わる。


 沈黙。

 会議室が静かになる。


 以前より高い。

 かなり。

 驚くほど。


 全員が見る。

 何度も。


 そして。

 国王が言った。


「上がっているな」


「上がっております」


 アメリアは頷く。


「外交能力改善」


「行政能力改善」


「危機管理能力改善」


「職務態度改善」


 淡々と読み上げる。

 事実だけを。

 いつも通り。


 ルーカス本人が一番驚いていた。


 もっと酷いと思っていた。

 本当に。


 だが。

 アメリアは嘘を書かない。


 出来るようになったことは認める。


 それだけだった。


「……そうか」


 小さく呟く。


 初めてだった。

 誰かに認められた気がした。


 結果で。

 行動で。

 感情ではなく。

 本当に。


 そして国王が次を聞く。


「では結論は」


 全員固まった。

 そこが問題なのだ。


 全員知っている。

 昔のアメリアなら。


『第二王子へ交代』


 と書いたはず。

 確実に。


 だが。

 アメリアは報告書を閉じた。


 そして。

 静かに言った。


「現状維持を推奨いたします」


 沈黙。

 部屋全体が止まった。


 アルフレッドも固まる。

 ルーカスも固まる。


 国王だけが笑った。


「理由は」


 アメリアは答える。


「改善したためです」


 あまりにも簡潔だった。


「以前は交代が最適でした」


「現在は違います」


 淡々と。

 当たり前のように。


「問題が解決した以上」


「解決策も変わります」


 それだけだった。


 恨みも。

 復讐も。

 全部無かった。


 最初から。


◇会議終了後


 人払いされた会議室。


 ルーカスだけが残った。


 そして。

 アメリアへ向き直る。


「何だ」


 言葉が出ない。


 沢山あったはずなのに。

 全部消えた。


 だから。

 一つだけ聞いた。


「俺は合格か」


 アメリアは少し考える。

 本当に少しだけ。


 そして。


「まだですわね」


 ほぼ即答だった。


 ルーカスが崩れ落ちそうになる。


 だが。

 続きがあった。


「ですが」


 一拍。


 アメリアは微笑んだ。


 柔らかく。

 本当に珍しく。


「以前よりは遥かに良くなりました」


 それは。

 褒め言葉だった。


 アメリアなりの。

 最大級の。


◇数日後


 監査局。


 平和だった。

 非常に。


 第二王子は忙しい。

 王太子補佐で忙しい。

 ルーカスは仕事している。


 以前よりずっと。


 ミリアはその補助をしている。

 東方皇子はセシリアと仲良くしている。


 問題なし。


 実に良い。


 そして。

 アメリアは紅茶を飲む。


 静かな午後。


「平和ですわね」


 心の底からそう思った。


 その時。

 監査局の扉が開く。


「局長!」


 職員が駆け込んでくる。


「地方予算で不正が三件!」


 アメリアの目が輝く。

 本当に輝く。


「そう」


 静かに立ち上がる。

 赤ペンを持つ。


 そして。

 監査局長は微笑んだ。


「お仕事ですわね」

お読み頂き、ありがとうございます。

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