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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第六章 王太子編

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第九話 当然です

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 ルーカスは変わった。

 誰の目にも分かるほどに。


 朝。

 王城。


 執務室。

 以前なら押し付けていた書類を自分で読む。


 目を通す。

 質問する。

 考える。

 そして判を押す。


 官僚達は少し困惑していた。


「最近どうしたんだ」


「分からない」


「別人じゃないか」


 本当に別人だった。

 少なくとも以前よりは。


◇監査局


「局長」


「何かしら」


「王太子殿下です」


 最近では珍しくもない。

 アメリアはため息を飲み込む。


(またですの)


 と思った。


 だが。

 今回のルーカスは違った。


「これを」


 差し出されたのは資料。


 謝罪ではない。

 相談でもない。


 資料だった。


 アメリアの眉が僅かに動く。


 これは珍しい。

 本当に珍しい。


「何でしょう」


「地方徴税制度の見直し案だ」


 アメリアは受け取る。

 読む。


 一分。


 二分。


 三分。


 静かだった。


 ルーカスは待つ。


 逃げない。

 言い訳もしない。


 ただ待つ。


 そして。


「こちらの試算」


 アメリアが言う。


「はい」


「間違っております」


 即答だった。


 ルーカスは苦笑する。


 やっぱりか。

 そう思った。


「どこだ」


 以前なら聞かなかった。

 今は聞く。


「ここです」


 アメリアが指差す。


「徴税率を下げれば税収は落ちます」


「うん」


「その分をどこで補うのかがありません」


「なるほど」


 メモを取る。


 アメリアは少しだけ驚いた。


 反論しない。

 言い訳もしない。


 素直に聞いている。


 珍しい。


 非常に。


◇数日後


 第二王子アルフレッド来訪。


「最近どうだ」


 アメリアが資料を渡す。


「こちらです」


「何だ」


『王太子業務改善状況』


 アルフレッドが固まる。


「作ったのか」


「当然です」


 当然らしい。


 怖い。

 本当に怖い。


「ええと……」


 ページをめくる。


『以前』


 低評価。

 かなり低評価。


『現在』


 改善。

 結構改善。


 数字で分かる。

 非常に分かりやすい。


「上がっているな」


「上がっております」


「評価を変えたのか」


「事実が変わりましたので」


 アメリアは当然のように言った。


 それが全てだった。


 感情ではない。

 好き嫌いでもない。


 結果。

 行動。

 改善。


 だから評価も変わる。


◇その日の帰り


 アルフレッドは考えていた。


 ルーカス。


 昔から兄だった。

 昔から王太子だった。


 だから。

 甘えていた部分もある。


 どうせ変わらないと思っていた。


 だが。

 変わっている。


 少しずつ。

 本当に少しずつだが。

 確実に。


「兄上……」


 思わず呟く。


 もし。

 本当に変われるのなら。


 話は変わる。


 王太子交代も。

 必要なくなるかもしれない。


◇監査局


 夕暮れ。

 アメリアは今日最後の資料へ目を通していた。


『王太子業務改善状況』


 更新版。


 一ページ。


 また改善。


 二ページ。


 ここも改善。


 三ページ。


 まだ足りない。

 だが前より良い。


 ずっと。

 良い。


 アメリアは赤ペンを置いた。


「なるほど」


 ぽつり。

 誰もいない執務室。


「成長はするのですわね」


 少しだけ感心していた。

 本当に少しだけ。


 そしてその頃。

 ルーカスは夜遅くまで執務室に残っていた。


 机の上には大量の書類。


 疲れる。

 大変だ。

 逃げ出したい。


 だが。

 思い出す。


『結果次第ですわね』


 アメリアの言葉を。


 だからペンを取る。


 もう一枚。

 もう一枚だけ。


 そうして。

 王国の未来を決める評価表は。


 少しずつ。

 本当に少しずつ書き換わり始めていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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