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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第六章 王太子編

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第七話 他人事ですので

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 第二王子アルフレッドは頭を抱えていた。

 目の前には書類。


『王位継承及び行政効率改善案』


 作成者。

 アメリア・フォン・アルフォード。


 怖い。

 本当に怖い。


 何が怖いか。

 内容が正しい。


 非常に。

 悔しいほど。

 正しい。


「……」


 アルフレッドはため息を吐く。


 ルーカスより自分が優秀だ。

 そんなことは思っていない。


 兄には兄の長所がある。


 剣。

 人望。

 カリスマ。


 少なくとも昔は。


 だが。

 王太子という役職。


 未来の国王。

 その観点だけで見るなら。


 アメリアの評価は間違っていない。


 それが辛かった。


◇数日後


 監査局。


「また来たのですか」


 アメリアが言う。


 挨拶代わりだった。

 最近の。


「また来た」


 アルフレッドも慣れていた。


 最近の。


 お互い。

 妙に慣れてしまった。


「今日は何でしょう」


「質問だ」


「どうぞ」


 アメリアが紅茶を置く。


 平和だった。

 非常に。


「何故そこまで王太子交代に拘る」


 沈黙。


 アメリアは少し考えた。

 本当に少しだけ。


「拘っておりますか?」


「拘っている」


 即答だった。


 本人だけ気付いていない。

 アメリアは首を傾げる。


 そして。

 資料を一枚取り出した。


 嫌な予感しかしない。


 アルフレッドは思った。

 本当に。


◇資料


 タイトル。


『王太子の仕事一覧』


「……」


「……」


 アルフレッドは無言だった。

 嫌な予感が的中した。


「ここをご覧ください」


 アメリアが指差す。


「外交」


「うん」


「行政」


「うん」


「貴族調整」


「うん」


「財政理解」


「うん」


「危機管理」


「うん」


 一拍。


「第一王子殿下はどの程度出来ますか?」


 アルフレッドが黙る。


 答えられない。


 なぜなら。

 ルーカスにも答えられないからだ。


「ですが」


 アメリアは続ける。


「第二王子殿下は違います」


 嫌な予感がする。


 さらに。


「質問します」

「やめてくれ」


「税制改革案」

「分かる」


「物流改革」

「分かる」


「農業改革」

「分かる」


「地方自治」

「分かる」


 沈黙。

 アメリアは真顔だった。


「有能ですわね」


 アルフレッドは天井を見上げた。


 褒められている。

 だが全然嬉しくない。


◇その頃


 ルーカスは城内を歩いていた。


 最近色々考える。

 本当に色々。


 婚約破棄。

 投獄。

 冤罪。

 アメリア。


 全部。


 全部自分が原因だ。


 今さら気付いた。

 だから苦しい。


 そして。

 最近気になることがある。


 第二王子。

 アルフレッド。


 監査局。

 アメリア。


 よく一緒にいる。


 以前の自分と。

 違う形で。


 その理由を。

 まだ知らない。


◇監査局


「殿下」


 アメリアが言う。


「何だ」


「王国を良くしたいのですよね」


「当然だ」


「であれば」


 一拍。


 アメリアは本気で言った。


「その席にいる理由が必要ですわ」


 アルフレッドが固まる。


 重い言葉だった。

 非常に。


 アメリアは続ける。


「生まれ順だけでは足りません」


「……」


「ルーカス殿下にも」


「……」


「第二王子殿下にも」


 静かな声。

 だが強い。


「何故自分が王になるのか」


「答えが必要です」


 沈黙。

 部屋が静かになる。


 アルフレッドは理解した。


 アメリアは。

 王位そのものに興味はない。

 誰が王になるかにも興味はない。


 ただ。

 王国が上手く回ってほしい。


 それだけだ。

 恐ろしいほど純粋に。


 そして。

 だからこそ。


 誰よりも危険だった。


 帰り際。

 アメリアは紅茶を飲みながら呟く。


「王太子というのも大変ですわね」


「他人事だな」


「他人事ですので」


 即答だった。


 アルフレッドは苦笑する。


 たぶん。

 この人は最後まで変わらない。


 権力も。

 地位も。

 名誉も。

 興味がない。


 ただ。

 仕事が減ることだけを望んでいる。


 そしてその結果として。

 王国最大の改革が動き始めていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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