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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第六章 王太子編

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第五話 やはり人事は重要ですわね

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 アメリアは悩んでいた。

 本当に珍しく。

 真面目に悩んでいた。


 問題がある。


 最近。

 本当に最近。


 仕事が増えている。

 原因は明確だった。


 ルーカス。

 ルーカスだった。


◇監査局


 机の上に紙を置く。


『問題点整理』


 アメリアは書き始めた。


 ①意思決定が遅い

 ②行政能力不足

 ③現場理解不足

 ④監査局への相談件数増加

 ⑤謝罪のため来訪

 ⑥仕事の妨害


 最後だけ少し文字が濃い。

 本当に少しだけ。


「局長?」


「何かしら」


「何を書いているのですか」


「業務改善案ですわ」


 監査局職員は聞かなかったことにした。

 恐らく王国の未来が変わる。


 嫌な予感しかしない。


◇翌日


 第二王子アルフレッド来訪。

 最近の日課だった。


「どうした」


 アメリアは資料を差し出した。


「こちらを」


「何だ?」


 アルフレッドは目を落とす。


 数秒。


 そして。

 固まった。


『王位継承及び行政効率改善案』


「……待て」


「何でしょう」


「待て」


 大切なので二回言った。


 アメリアは首を傾げる。

 意味が分からない。


「問題がございましたか?」


「問題しかない」


 即答だった。


◇一時間後


「つまり」


 アルフレッドが疲れた顔で言う。


「兄上を王太子から外したいのか」


「違います」


 即答。

 アルフレッドが少し安心する。


 その瞬間。


「配置転換です」


 安心が消えた。


「同じでは?」


「違います」


 アメリアは真面目な顔だった。

 本当に真面目だった。


「能力の適正配置です」


 恐ろしいことを言っている。

 本人だけ気付いていない。


「殿下は優秀です」


「そうか?」


「はい」


 即答だった。

 アルフレッドが固まる。


「説明を求める」


「相談されます」


「うん」


「理解なさいます」


「うん」


「改善なさいます」


「うん」


「実行なさいます」


「……」


 一拍。


「有能ですわね」


 本当にそう思っている。

 本気で。


 一方。

 ルーカス。


 相談しない。

 理解しない。

 改善しない。

 謝罪しに来る。

 仕事が増える。

 非常に増える。


 結論。

 配置転換。


 非常に合理的だった。


◇その頃


 ルーカスはまた監査局へ来ていた。


 最近の日課である。


「アメリアはいるか」


「第二王子殿下と面談中です」


 受付が答える。

 ルーカスの眉が動く。


「またか」


 最近多い。

 本当に多い。


 だが。

 理由は知らない。


 知ったら気絶する。

 自分の後任について話し合っているのだから。


◇面談室


「却下だ」


 アルフレッドが言う。


「そうですか」


 アメリアは残念そうだった。

 本当に少しだけ。


「理由は」


「王家が吹き飛ぶ」


「左様ですか」


 なるほど。

 その視点は無かった。


 アメリアはメモを取る。


『王家が吹き飛ぶ』


 重要事項。


 アルフレッドは頭を抱えた。


 本当にこの人は怖い。

 悪意が無いから余計に。


 そして。

 ふと気付く。


「アメリア嬢」


「何でしょう」


「君」


 一拍。


「本気だったのか」


 アメリアは首を傾げる。


 何を今更。

 そんな顔だった。


「当然では?」


 即答。


「王国を良くするのでしょう?」


 アルフレッドは沈黙した。

 この人の恐ろしい所はここだ。


 復讐ではない。

 恨みでもない。

 怒りでもない。


 本気で。

 心の底から。


 王国運営の効率化を考えているだけなのだ。


 そしてその結果。

 王太子交代案が出てきた。


 恐ろしいほど合理的に。


 アメリアは紅茶を飲む。

 そして静かに呟いた。


「やはり人事は重要ですわね」


 その言葉に。

 後に王国の歴史家達は震えることになる。


 なぜなら。

 この日。

 アメリア・フォン・アルフォードは。


 王国最大の改革案を提出したのだから。

お読み頂き、ありがとうございます。

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