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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第六章 王太子編

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第二話 あと三冊ございます

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 それから三日後。

 監査局。


 アメリアは平和を満喫していた。


 帳簿。

 予算書。

 契約書。


 実に良い。

 数字は裏切らない。

 少なくとも人間よりは。


 その時だった。

 勢いよく扉が開いた。


「アメリア嬢!」


 聞き覚えのある声。

 第二王子アルフレッドだった。


 しかも顔色が悪い。

 かなり悪い。


「ご機嫌よう」


「ご機嫌ようじゃない!」


 アメリアが固まる。


 珍しい。

 王族が取り乱している。


「何かございましたか?」


「何かあった!」


 どん。


 机へ置かれる。


 十年計画。

 三日前に渡したものだった。


「読まれたのですね」


「読んだ!」


「そうですか」


 良かった。


 読まずに返されたら悲しい。

 暇な時間に書いた力作だった。


◇応接室


「まず聞きたい」


 第二王子が真顔になる。


「これは何だ」


 十年計画を指差す。


「十年計画です」


「それは分かる!」


 珍しく大声だった。


 アメリアは少し考える。

 本当に少しだけ。


「王国改革案でしょうか」


「何で作った」


「暇でしたので」


 即答だった。


 第二王子は頭を抱えた。


 予想通りだった。

 予想通りだったが。


 実際聞くと破壊力が違う。


「暇で作るものではない」


「そうでしょうか」


「そうだ」


 農業改革。

 税制改革。

 物流再編。

 教育制度改正。

 軍備再編。

 地方自治。

 王都開発。


 十年計画である。

 本気の国家運営資料である。


 暇潰しで作るものではない。

 断じて。


◇二時間後


 説明会になっていた。


 アメリアは黒板を使っている。

 監査局職員も固まっている。


「現在の税制は非効率です」


 さらさら書く。


「徴税担当を一本化します」


「待て」


「はい」


「予算は」


「四年で回収可能です」


 資料を出す。

 既に試算済み。


「物流は」


「こちらを」


 資料。


「人員は」


「こちらを」


 資料。


「反対派貴族は」


「こちらを」


 資料。

 アルフレッドの顔色が消える。


 全部ある。


 全部。


 反論する前に答えが出てくる。


 怖い。

 本当に怖い。


◇夕方


「……なるほど」


 第二王子は椅子へ沈んだ。


 疲れた。

 物凄く疲れた。


 一方。

 アメリアは元気だった。


 久しぶりに楽しかった。

 数字の話をした。

 予算の話をした。


 誰にも邪魔されない。

 素晴らしい。


「あと三冊ございます」


 アメリアが言う。


「何が」


「改革案です」


 第二王子が固まった。


 今。

 三冊と言ったか?


「……三冊?」


「はい」


 当然のように頷く。


「外交編」


「待て」


「産業育成編」


「待て」


「地方再編編」


「待ってくださいませ?」


 アメリアが初めて敬語で聞き返した。

 アルフレッドは机へ突っ伏した。


 帰りたい。

 本当に帰りたい。


◇帰り際


 しかし。

 彼は資料を持ち帰った。


 一冊ではない。


 三冊。

 全部。


 理由は簡単だった。


 捨てられない。


 内容が良すぎる。

 あまりにも。


 王城へ戻る馬車の中。

 アルフレッドは一枚目を開く。


 そして顔面蒼白になる。


「何だこれ……」


 怖い。

 本当に怖い。


 だが。

 同時に思った。


 もし。

 本当にもし。


 この人が王国運営に本気で関わったら。


 王国は変わる。

 確実に。


 良くも悪くも。


 一方その頃。

 監査局。


 アメリアは紅茶を飲んでいた。


「良い方でしたわね」


 ぽつりと呟く。


 第二王子。


 話を聞く。

 理解も早い。

 めったにいない。


 少なくとも。

 有害物質よりは。

 遥かに。


 そして。

 その評価が。

 後にルーカスの人生を大きく狂わせることになるのだが。


 今のアメリアはまだ知らない。


 ただ。

 平和な一日だったと思っていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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