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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第五章 監獄監査令嬢編

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第三話 増えましたわね

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 卒業パーティーは終わった。

 少なくともアメリアの中では終わっていた。


 婚約破棄。

 身に覚えのない罪状。

 大勢の前での糾弾。


 普通の令嬢なら泣いていただろう。


 だがアメリアは違った。


(面倒ですわね)


 それが第一感想だった。

 そして第二感想。


(父上が怒りますわね)


 第三感想。


(仕事が増えますわね)


 本当にそれだけだった。


◇翌日


 公爵家。

 応接室。


「アメリア」


 父である公爵の声は低かった。

 非常に低かった。

 使用人達が震えるほどに。


「はい」


 アメリアはいつも通りだった。


「お前はやったのか」


「何をでしょう」


「男爵令嬢への嫌がらせだ」


 即答だった。


「いいえ」


 公爵は黙る。


「証明できるか」


「可能かと」


 こちらも即答。

 当然だった。


 二年生の時に処理済みである。


 生徒会記録。

 証言。

 報告書。


 全部残っている。


 アメリアはそういう人間だった。


 やった仕事は記録する。

 やらなかった仕事も記録する。


 だから問題ない。

 そう思っていた。


 その時だった。


 扉が開く。

 王城の兵士達だった。


 アメリアは少し驚いた。

 本当に少しだけ。


「アメリア・フォン・アルフォード」


「はい」


「王命である」


 嫌な予感しかしない。


「何でしょうか」


「貴女を拘束する」


 沈黙。


 公爵が立ち上がる。

 凄まじい圧力だった。


「説明してもらおうか」


 兵士達の顔色が変わる。

 当然だった。


 現役閣僚。

 王国有数の大貴族。

 そして娘大好き。


 最悪の相手である。


「王命です」


「理由を聞いている」


 空気が重い。

 兵士は震えながら答えた。


「男爵令嬢ミリアへの継続的嫌がらせ」


「証拠は」


「……」


 沈黙。

 公爵の目が細くなる。


 アメリアは思った。


(証拠はありませんわね)


 なぜなら無いから。

 本当に無い。


 むしろ止めた側だ。


◇王城


 牢獄。

 案内されたアメリアは周囲を見渡した。


 想像より綺麗だった。


「失礼いたします」


 兵士が頭を下げる。

 恐縮している。

 非常に。


 アメリアは首を傾げた。


「何か?」


「その……」


 兵士が言いにくそうに口を開く。


「本当に申し訳ございません」


 アメリアは理解した。


 兵士達も分かっている。

 おかしいことを。


 だが逆らえない。


「お気になさらず」


 アメリアは微笑む。


「仕事でしょう?」


 兵士が固まる。

 そして頭を下げた。


 深く。

 本当に深く。


◇独房


 扉が閉まる。

 静かだった。

 久しぶりに。

 とても静かだった。


 アメリアは椅子へ腰掛ける。


 考える。

 整理する。


 いつものように。


 問題。

 婚約破棄。

 投獄。

 証拠なし。


 ルーカスは本気。

 ミリアは困惑。


 つまり。


 第三者。

 黒幕あり。


 ここまでは確定。


 そして。

 アメリアはあの夜の光景を思い出す。


 卒業パーティー。

 会場後方。

 宰相。


 微笑み。

 一瞬だけ。


 だが見間違えない。


「……」


 アメリアは目を閉じた。


 理解した。

 今回の相手は。

 感情論ではない。

 王太子でもない。

 男爵令嬢でもない。


 政治だ。


 面倒だった。

 本当に面倒だった。


 だから。

 アメリアはため息を吐いた。


 そして。

 心の底から呟く。


「増えましたわね」


 ぽつり。

 誰も聞いていない牢獄の中。


「仕事が」


 それがアメリア・フォン・アルフォードだった。


 投獄されても。

 婚約破棄されても。


 真っ先に気にしたのは。

 増えた仕事の方だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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