第三話 私が好きでやっていると?
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
アメリアは困っていた。
本当に困っていた。
原因は一つ。
東方皇子レイ・シェン。
非常に優秀。
非常に有能。
非常に話が通じる。
だから困る。
普通なら。
歓迎行事終了。
↓
外交案件終了。
↓
解散。
で終わる。
だが終わらない。
「アメリア嬢」
呼ばれる。
「何でしょう」
「少し相談がある」
相談。
嫌な言葉だった。
仕事が増える予感がする。
実際増えた。
◇図書館
「留学生制度について意見を聞きたい」
「宜しいですわよ」
「交易についても」
「構いません」
「東方との共同研究についても」
「そうですわね」
一時間後。
アメリアは理解した。
これは駄目だ。
完全に相談窓口になっている。
問題である。
非常に問題である。
(いつからでしょう)
歓迎担当。
↓
外交補佐。
↓
相談役。
増えてる。
確実に増えている。
仕事が。
◇生徒会室
「また一緒ですね」
副会長が窓を見る。
「またですね」
会計担当も頷く。
アメリア。
レイ。
二人で話している。
いつも通り。
「アメリア嬢は?」
「気付いてない」
即答だった。
全員同意する。
あの人は絶対に気付いていない。
今考えていることも、
『仕事を増やさない方法』
その辺だろう。
◇同時刻
問題はもう一人
ルーカスだった。
最近。
機嫌が悪い。
異常なほど。
本人も理由が分からない。
ただ。
見たくない。
その光景が。
「また一緒か」
ぽつりと呟く。
隣にはミリア。
「仲が良いですね」
無邪気な言葉。
ルーカスは面白くなかった。
「仕事だろう」
「そうですね」
そう。
仕事だ。
分かっている。
だが。
分かっているのに。
面白くない。
◇数日後
事件が起きた。
王城主催交流会。
参加者は王族。
高位貴族。
外交官。
重要人物ばかり。
アメリアも当然参加していた。
仕事だから。
すると。
「皆様」
レイが立ち上がる。
嫌な予感。
アメリアは悟った。
外交経験で分かる。
こういう時の予感は当たる。
「王国滞在中、最も世話になった方へ感謝を伝えたい」
会場が静まる。
やめなさい。
アメリアは思った。
非常に強く思った。
だが遅い。
「アメリア嬢」
名前を呼ばれる。
終わった。
内心そう思う。
「君のおかげで非常に有意義な留学となった」
周囲がざわつく。
アメリアは微笑む。
外交用の笑顔。
完璧な笑顔。
内心。
(仕事が増えますわね)
だけ。
本当にそれだけ。
だが。
ルーカスは違った。
その瞬間。
胸の奥で何かが切れた。
◇交流会終了後
「アメリア」
呼び止められる。
「何でしょう」
振り返る。
ルーカス。
明らかに不機嫌だった。
「最近随分楽しそうだな」
意味が分からない。
「そうでしょうか」
「東方皇子とばかり一緒にいる」
「歓迎担当ですので」
当然の回答。
だがルーカスは納得しない。
「婚約者がいることを忘れたのか」
アメリアは固まった。
本当に固まった。
数秒。
生まれて初めて。
本当に理解できなかった。
「殿下」
「何だ」
「まさかとは思いますが」
アメリアは首を傾げる。
「私が好きでやっていると?」
沈黙。
ルーカスは答えない。
答えないということは。
そういうことだった。
アメリアは理解した。
そして。
久しぶりに。
本当に久しぶりに。
腹が立った。
男爵令嬢の件以来かもしれない。
何故なら。
全部仕事だ。
全部。
全部。
全部。
仕事だった。
宰相の命令。
王命。
外交。
未来の王太子妃教育。
だからやった。
それなのに。
責められた。
理不尽だった。
非常に。
アメリアは微笑む。
完璧な笑顔で。
「そうですか」
そして一礼する。
「失礼いたします」
ルーカスは気付かなかった。
その笑顔が。
ルーカスの実績を作るために。
生徒会へ行った時と同じ笑顔だということに。
アメリアは歩きながら考える。
問題。
東方皇子。
↓
興味を持たれている。
↓
王太子が無駄に嫉妬する。
↓
仕事が増える。
解決方法。
思考開始。
数秒。
そして結論。
(他に興味を向ければ宜しいのですわね)
かくして。
東方皇子お見合い計画が始まるのであった。
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