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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第四章 留学生編

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第一話 長引きますわね

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 三年生になった春。

 アメリアは平穏を満喫していた。


 男爵令嬢の件は終わった。

 生徒会も安定している。

 学園祭の準備も順調。

 王城実務も慣れた。

 王太子は相変わらず有害物質だったが。

 以前ほど自分に絡まなくなった。


 素晴らしい。

 非常に素晴らしい。


「平和ですわね」


 図書館。


 本。

 紅茶。

 静寂。


 完璧だった。


 そう。

 その日までは。


◇王城


「アメリア嬢」


 呼び出しだった。


 ちなみに良い予感は全くしない。


 呼び出し元は宰相。


 予感がさらに悪くなった。


「お呼びでしょうか」


「うむ」


 宰相は書類を差し出した。


「東方連盟より第三皇子が留学する」


 アメリアは書類を読む。


 東方連盟。

 王国最大の同盟国。

 貿易相手。

 軍事協力国。


 極めて重要。


「そうですか」


 他人事だった。


 だから。

 続く言葉を聞いた瞬間。


 固まった。


「接待を任せる」


 沈黙。

 長い沈黙。


「……私にですか」


「うむ」


 即答だった。


 アメリアは考える。

 必死に考える。


 何か。

 何か回避する方法はないか。


「王太子殿下は」


「断られた」


「そうですか」


 有害物質。

 心の中でそう呟く。


「未来の王太子妃として経験も必要だろう」


「左様でございますね」


 正論だった。

 反論できない。


 だから。


「承知いたしました」


 礼をする。

 完璧な令嬢の微笑み。


 そして。

 心の中だけで。


(仕事が増えましたわね)


 深いため息を吐いた。


◇数日後


 歓迎会。


 学園講堂。

 東方連盟第三皇子。

 レイ・シェン。


 入場した瞬間。

 会場がざわついた。


 整った容姿。

 王族としての気品。

 そして東方特有の衣装。


 注目されるのも当然だった。


 一方。

 アメリアは壁際で待機していた。


 笑顔。

 完璧。


 だが内心は。


(帰りたいですわ)


 である。


 しかし帰れない。


 外交だから。

 未来の王太子妃だから。

 仕事だから。


 仕方ない。


「アメリア・フォン・アルフォードにございます」

挿絵(By みてみん)


 完璧な礼。

 誰が見ても百点。


 レイは少しだけ驚いた。


「東方語を話せるのか」


「簡単なものでしたら」


 実際はかなり話せる。

 だが言わない。


 外交では過度な自己主張は不要だから。


「長旅、お疲れ様でございました」


「感謝する」


「歓迎会のお料理には東方の香辛料を一部使用しております」


「ほう」


「本国とは異なるかと思われますが、ご容赦ください」


 自然だった。

 完璧だった。

 相手を立てる。

 話題を切らさない。

 知識もある。

 礼節もある。

 笑顔も自然。


 レイは思った。


 凄い。

 本当に凄い。


 一方。

 アメリアは思った。


(あと三十分ですわね)


 歓迎会終了まで。


◇夜


 公爵家。

 自室。


 アメリアは机へ突っ伏した。


「お嬢様」


 執事が声を掛ける。


「何かしら」


「いかがでしたか」


 アメリアは静かに答えた。


「優秀な方でした」


「そうですか」


「非常に優秀でした」


 本心だった。


 理解も早い。

 話も通じる。

 知識もある。

 社交も上手い。

 王族として理想的。


 だからこそ。

 アメリアは確信した。


「長引きますわね」


「何がでしょう」


「接待です」


 執事は視線を逸らした。

 可哀想に。


 アメリアの中では。

 東方皇子との交流は。


 外交案件。

 接待業務。

 増加した仕事。


 それ以上でもそれ以下でもなかった。


◇同時刻

 東方皇子レイは自室で考えていた。


「なるほど」


 小さく笑う。


「面白い」


 その感想は。

 アメリアが聞けば確実に困惑するものだった。


 なぜなら。

 彼女は本気で。


 仕事をしただけなのだから。

お読み頂き、ありがとうございます。

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