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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第三章 令嬢編

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第一話 業務に支障が出なければ問題ありませんわ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 春。

 二年生になった。

 

 暖かな風が校舎の窓から流れ込んでいる。

 天気も良い。

 実に良い。


 アメリアは久しぶりに穏やかな気分だった。


「平和ですわね」


 図書館。

 お気に入りの席。

 紅茶。

 本。


 完璧だった。


 去年は大変だった。


 王太子。

 生徒会。

 学園祭。

 予算。

 行事。


 とにかく忙しかった。


 だが今年は違う。


 生徒会は軌道に乗った。

 委員会も動いている。

 学園行事も問題ない。


 そして何より。


 ルーカスが静かだった。

 非常に静かだった。


 最近は小言も少ない。


 素晴らしいことである。


(やはり実績は大事ですわね)


 アメリアは満足していた。


 その時だった。


「アメリア様!」


 慌ただしい足音。


 生徒会役員の一人が駆け込んでくる。


「どうかいたしましたの?」


 アメリアは本から顔を上げる。


「大変です!」


 大変。


 その言葉にアメリアの眉が僅かに動いた。


 嫌な予感がした。


「何がですの?」


「殿下が!」


 予感が強くなる。


「殿下が?」


「新入生の男爵令嬢に夢中です!」


 沈黙。


 アメリアも。

 生徒会役員も。


 全員が沈黙した。


 数秒後。


「そうですの」


 興味を失った。


 心底どうでもよかった。


 アメリアは再び本を開く。


「アメリア様!?」


「何か問題でも?」


「問題しかありません!」


 役員が頭を抱える。


「殿下ですよ!?」


「殿下ですわね」


「婚約者ですよ!?」


「ええ」


「気にならないんですか!?」


 アメリアは本気で考えた。


 気になるだろうか。


 少し。


 ほんの少しだけ。


 考える。


 そして結論を出した。


「業務に支障が出なければ問題ありませんわ」


 役員は絶望した。


 この人はそういう人である。


 恋愛より。


 業務。


 感情より。


 効率。


 婚約者の浮気疑惑より。


 スケジュール管理。


 そういう人だった。


「まだ何も起きておりませんし」


 アメリアがページをめくる。


「新入生でしょう?」


「そうですが……」


「なら問題ないでしょう」


 本気だった。


 本当に本気だった。


 だから。


 アメリアはまだ知らない。


 その男爵令嬢が。


 この先数年間。


 自分の仕事量を三倍にする元凶になることを。


 そして生徒会役員達も知らなかった。


 王太子より。

 男爵令嬢より。


 もっと恐ろしい存在がいることを。


 ――噂好きの令嬢達である。

お読み頂き、ありがとうございます。

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