第十一話 静かになりましたわね
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
学園祭終了後。
生徒会室。
「今年は大成功でしたな」
副会長が言う。
来場者数増加。
予算黒字。
トラブル激減。
全て順調だった。
そしてその中心にいたのは。
誰がどう見ても。
アメリアだった。
「各所から賞賛の声が届いております」
「そうか」
生徒会長は頷く。
そこで。
「それでは報告書の修正をお願いいたします」
アメリアが紙を差し出した。
「修正?」
「はい」
生徒会長が目を通す。
そして固まる。
『主要企画立案者 第一王子ルーカス』
『予算改革提案者 第一王子ルーカス』
『来場者導線改善案 第一王子ルーカス』
『各委員会調整責任者 第一王子ルーカス』
沈黙。
長い沈黙。
「アメリア嬢」
「何でしょう」
「これは何だ」
「報告書ですわ」
「違う」
即座に否定された。
「全部お前がやっただろう」
「一部はそうですわね」
「一部じゃない」
副会長が頭を抱える。
「十割だ」
「そうでしたかしら」
アメリアは本当に不思議そうだった。
「ですが、殿下も生徒会長補佐としてお名前がありますし」
「名前しかない」
「王族ですもの」
「そういう問題じゃない」
生徒会全員が同意する。
そういう問題ではない。
だが。
アメリアは静かに紅茶を口にした。
「よろしいではありませんか」
珍しく。
ほんの少しだけ。
疲れた顔だった。
「この程度で殿下の機嫌が良くなるのであれば安いものです」
その瞬間。
全員理解した。
ああ。
この人。
本気だ。
学園改革のためじゃない。
生徒会のためでもない。
王国の未来のためでもない。
ただ。
絡まれたくなかっただけだ。
◇数週間後
王都。
「最近の第一王子は素晴らしい」
「学園祭改革を成し遂げたそうだ」
「さすが王位継承者」
ルーカス本人も満更ではなかった。
「当然だな」
少し得意げだった。
そして。
アメリアへの小言が消えた。
「アメリア」
「何でしょう」
「学園祭、ご苦労だったな」
「ありがとうございます」
「君もよく補佐してくれた」
「光栄ですわ」
それだけ。
それだけだった。
ルーカスは去る。
アメリアは見送る。
そして。
「静かになりましたわね」
本当に。
心の底から。
満足そうに。
そう呟いた。
生徒会長は思う。
学園始まって以来、
これほど大掛かりな工作を、
これほど個人的な理由でやった人間を知らない。
そしてアメリアは満足する。
目的を達成したから。
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