第十話 最近は平和ですわね
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
「それでは本日より、生徒会補佐としてアメリア嬢を迎える」
生徒会長クラウスの言葉に役員達が拍手する。
アメリアは静かに一礼した。
「よろしくお願いいたします」
完璧だった。
姿勢も。
礼も。
笑顔も。
何も問題ない。
問題があるとすれば。
目の前の少女が一年生だということくらいだった。
「では早速だが資料整理を――」
「承知いたしました」
会計担当が資料の山を渡す。
新人への嫌がらせではない。
本当に仕事が多いのだ。
学園祭。
予算。
剣術大会。
定例会議。
各委員会。
毎年揉める。
必ず揉める。
だから皆苦労している。
はずだった。
◇二日後。
「終わりました」
会計担当が固まる。
「全部か?」
「はい」
机に積まれた資料。
綺麗に分類されている。
予算別。
部署別。
行事別。
緊急度別。
さらに。
「こちらは重複申請です」
紙が出る。
「こちらは予算超過」
また紙が出る。
「こちらは申請漏れですわね」
さらに紙。
会計担当の顔が青くなった。
「二日で全部見たのか?」
「はい」
アメリアは不思議そうだった。
「そういう仕事では?」
沈黙。
生徒会役員達は思った。
怖い。
非常に怖い。
◇その一週間後
定例会議。
「学園祭の出店数についてですが」
例年の議題。
必ず揉める。
今年も揉めていた。
「予算が足りない」
「場所が足りない」
「人員が足りない」
毎年同じ。
十分。
二十分。
三十分。
結論が出ない。
そこで。
「失礼してもよろしいでしょうか」
アメリアが手を上げた。
全員が静まる。
「どうぞ」
アメリアは紙を差し出した。
「今年の来場予測です」
沈黙。
「過去十年の来場者数」
沈黙。
「出店ごとの利益率」
沈黙。
「配置効率」
沈黙。
「必要人員」
沈黙。
「予算案」
沈黙。
全て作ってあった。
「……いつ作った」
副会長が聞く。
「昨日ですわ」
昨日。
昨日。
昨日。
生徒会長が窓の外を見た。
空が綺麗だった。
◇そして、生徒会加入から一か月。
王太子ルーカスは気付き始める。
「最近、生徒会の評判が良いな」
当然だった。
仕事が片付く。
揉め事が減る。
予算も改善する。
だが。
誰も知らない。
いや。
生徒会だけは知っている。
原因が誰なのか。
そしてアメリアだけが知らない。
自分が原因だということを。
「最近は平和ですわね」
紅茶を飲みながら微笑むアメリア。
生徒会一同は思った。
いや、お前が来てから全部変わったんだよ。
と。
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