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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十五章 諸国戦争編計略

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終話 行きましょう

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 翌朝。

 王城大会議室。


 重い空気だった。


 第四補給拠点陥落。

 補給物資焼失。

 避難計画遅延。


 敗北の傷跡はまだ生々しい。


 会議室に集まった面々も疲れていた。


 国王。

 ルーカス。

 アルフレッド。

 軍務大臣。

 文官達。

 監査局幹部。


 誰もが同じだった。


 失敗した。


 その事実から逃げられない。



 だが。

 今日は少しだけ違った。


 ルーカスが気付く。


 会議室へ入ってきたミリアを見て。


 昨日までと違う。


 ほんの僅かに。

 本当に僅かに。


 だが違う。

 何かを決めた人間の顔だった。


「では始めましょう」


 国王が告げる。


 会議が始まる。


 最初に出されたのは避難計画修正版だった。


「北部三地域の移送遅延です」


 文官が報告する。


「現在不足している輸送能力は約二割」


「新規荷馬車の調達を――」



「待ってください」



 ミリアが口を開いた。


 全員が振り向く。



 ミリアは資料を見る。


 昨日までなら。

 ここで考えていた。


 アメリア様なら。

 どうするだろう。


 何を見るだろう。

 何に気付くだろう。


 だが今は違う。


「地方領主の協力は得られませんか?」


 会議室が静かになる。


「協力?」


 軍務大臣が首を傾げる。


「はい」


 ミリアは頷いた。


「荷馬車を増やすのではなく」

「既に存在している荷馬車を借りるのです」


 資料を広げる。


「北部周辺の有力領地」

「商業都市」

「流通拠点」


「全てへ支援要請を出しましょう」


 文官達が資料を確認する。


「可能かもしれません」

「確かに調達より早い」 

「現地対応にもなりますな」


 少しずつ声が上がる。



 ミリアは黙って聞く。


 以前なら。

 自分一人で答えを探していた。


 だが今は違う。 


「軍の意見はどうでしょう」


 軍務大臣を見る。 


「現地輸送網の確保が優先ですな」


「監査局は?」


 今度は監査局副局長。


「予算は問題ありません」


「地方備蓄との併用も可能でしょう」


「文官は?」

「即日対応可能です」


 各部署の回答が返ってくる。


 ミリアは頷いた。


 アメリアなら。

 たぶんもっと早かった。


 もっと効率的だった。

 もっと正確だった。


 だが。

 それはアメリアだ。


 自分ではない。



 ルーカスはその様子を見ていた。

 そして気付く。


 ミリアは変わった。


 違う。


 戻ったのだ。

 元々のミリアに。


 人の話を聞く。

 人を繋ぐ。

 人を動かす。


 アメリアには出来ないこと。


 ミリアだから出来ること。


 それを始めている。


 ルーカスは少しだけ笑った。



 会議は続く。


 補給計画。

 避難計画。

 防衛ライン再構築。


 意見が飛び交う。


 以前より多かった。


 誰か一人の答えを待つのではない。


 全員で考えている。

 全員で作っている。


 それはアメリア流ではない。


 しかし。

 それでいいのだと。


 少しずつ皆も理解し始めていた。



 やがて会議終盤。


 議題が終わる。


 皆疲れていた。


 だが。

 昨日とは違う。

 敗北で終わる空気ではない。


 前を見る空気だった。


 そこで。

 ミリアが立ち上がった。


「皆様」


 会議室が静かになる。


「先日の敗北は私達の失敗です」


 誰も否定しない。


 事実だからだ。


「私も責任があります」


 一呼吸。


「次は間違えません」


 そこで止まる。


 そして。

 ゆっくり首を振った。


「いいえ」


 会議室が静まる。


「間違えるかもしれません」


 重臣達が顔を上げる。


「失敗するかもしれません」


「また見落とすかもしれません」


 誰も言葉を挟まない。

 

「ですが」


 ミリアは前を見る。


 真っ直ぐに。 


「それでも止まりません」


 静かな声だった。


「守るために」


「前へ進みます」


 国を。


 民を。


 皆を。


「だから」


「お力を貸してください」


 沈黙。


 そして。

 最初に立ち上がったのは軍務大臣だった。 


「当然ですな」


 続いて文官達。


「お任せください」


「最後までやり遂げます」


「共に戦いましょう」


 次々に声が上がる。


 会議室の空気が変わった。


 敗北の空気ではない。


 前へ進む空気だ。



 その時だった。


 扉が勢いよく開く。


 伝令兵だった。


「報告!」


 全員が振り向く。


「東方連盟より使者到着!」


 会議室が静まり返る。


「援軍に関する正式回答です!」


 ルーカスが立ち上がる。


「入れ!」


 伝令兵は深く頭を下げた。 


「東方連盟軍」


「既に国境を越えました!」


 一瞬。

 誰も言葉を失った。


 そして。

 小さな歓声が上がる。


 希望だった。


 すぐに逆転できる訳ではない。

 苦しい戦いも続く。

 敗北も消えない。


 だが。

 もう一人ではない。


 ミリアは窓の外を見る。


 夜明けの光が差し込んでいた。

 

 まだ勝っていない。

 まだ苦しい。


 それでも。

 前を向ける。


「行きましょう」


 その言葉に。

 会議室全員が頷いた。


 王国はまだ戦える。


 そう思えた朝だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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