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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十五章 諸国戦争編計略

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第四話 ……アメリア様なら

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 開戦から七日後。

 王城大会議室。


 壁一面の地図。

 その上には無数の駒が置かれている。


 北方軍。

 西方軍。

 王国軍。


 そして各補給拠点。


「敵補給隊を確認しました」


 報告官が言う。


「北部街道へ向かっています」


 軍務大臣が頷いた。 


「予想通りですな」

 

 会議室にも安堵が広がる。 


 敵軍十万。 

 正面からぶつかれば不利。


 だからこそ。

 まず補給線を断つ。


 それは前回戦争で証明された戦術だった。


「監査局の見解は?」


 国王が尋ねる。


 監査局副局長が資料を確認する。


「問題ありません」

「補給量も算出通りです」

「備蓄消費速度から見ても主力補給隊である可能性が高いかと」


 資料に間違いはない。


 数字も合っている。


 だから誰も疑わない。


「では予定通り」


 ルーカスが言う。


「補給隊を叩く」


 全員が頷いた。

 それが最善に見えた。


 アメリアなら。

 きっとそうした。


 誰もがそう思っていた。


 だから。

 そこに疑問を持たなかった。



 その頃。

 北部戦線。


 森の中。

 王国軍部隊が待機していた。


 狙うは敵補給隊。


「接近します!」


 斥候の報告。

 指揮官が頷く。


「全軍待機」


「引き付けろ」


 やがて。

 荷馬車列が姿を現した。


 数十台。


 護衛兵もいる。


 十分な規模。


 誰が見ても補給隊だった。


「掛かれ!」


 王国軍が飛び出す。


 奇襲。

 成功。


 護衛兵が崩れる。

 荷馬車を制圧する。


 勝った。


 そう思った。


「将軍!」


 一人の兵士が叫ぶ。


「中身が!」


 箱が開かれる。


 そして。



 沈黙。


 食料ではない。

 武器でもない。


 石だった。

 木材だった。

 砂袋だった。


「なに……?」


 指揮官が固まる。


 嫌な汗が流れる。



「報告!」


 王城。

 会議室の扉が勢いよく開く。


 伝令兵だった。


「敵補給隊を制圧!」


 一瞬。

 空気が明るくなる。


 しかし。

 次の言葉で凍った。


「囮でした!」


 沈黙。


「何だと?」


 ルーカスが立ち上がる。


「補給物資は存在せず!」

「全て偽装でした!」


 会議室が静まり返る。


 だが終わらない。


 伝令兵の顔色が悪い。


 非常に悪い。


「続けろ」


 国王が命じる。


 伝令兵は唇を噛む。


 そして報告した。


「同時刻」


「別経路より敵主力補給隊が突破」


 地図へ指が向く。


 誰も予想していなかった街道。


「さらに」


 また続く。


「西部第四補給拠点へ敵先遣隊が攻撃」


 会議室の空気が変わる。


 まずい。


 本当にまずい。


 誰もがそう思った。



 同時刻。

 北方連合軍本営。


「掛かったか」


 敵将が笑う。


「見事にな」


 その隣。

 レイナード王国の元宰相が地図を見ていた。


 喜んではいない。

 笑ってもいない。


 ただ当然のように頷く。


「だから言った」


「奴らはそう動く」


 北方将軍が笑う。


「恐ろしいな」


「アメリアとやらを知っていると」


 元宰相は冷ややかに答えた。


「違う」


「私はアメリアを知っているのではない」


 一拍。


「王国を知っている」


 地図の王都を見る。


「今の王国は」

「アメリアの答えを真似しているだけだ」


「だから誘導できる」


 将軍達が満足そうに頷く。


 罠は成功した。


 計画通りに。



 再び王城。

 会議室。


 沈黙。


 誰も声を出せない。


 補給隊。

 囮。

 偽装。

 二重補給路。


 全部。


 敵の計画通りだった。


「……アメリア様なら」


 誰かが呟いた。


 無意識だった。


 その一言で。

 会議室の全員が俯く。


 ミリアも。

 ルーカスも。

 アルフレッドも。


 皆同じだった。


 アメリアなら気付いたかもしれない。

 アメリアなら見抜いたかもしれない。


 アメリアなら――


「報告!」


 再び扉が開く。


 今度はさらに慌ただしい。


「第四補給拠点陥落!」


 全員が凍る。


「備蓄倉庫炎上!」


 空気が止まる。


「避難民移送計画に遅延発生!」


 誰も動かない。


 その瞬間。


 初めて。


 本当に初めて。


 会議室の全員が理解した。


 アメリアはいない。


 資料はある。


 制度もある。


 計画もある。


 だが。

 アメリア自身はいない。


 本当に。


 いないのだ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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