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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第二章 学園入学編

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第七話 後学のためですわ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 放課後。

 生徒会室。

 生徒会長クラウスは書類から顔を上げた。

 珍しい来客だった。


「失礼いたします」


 室内が静まる。


 アメリア・フォン・アルフォード。

 学園内で知らぬ者はいない。


「アメリア嬢?」


「お時間をいただいてもよろしいでしょうか」


「もちろんだ」


 クラウスは席を勧める。

 アメリアは礼をして腰を下ろした。


「本日はどのようなご用件で?」


 アメリアは優雅に一礼し、迷いなく答えた。


「一つ、お願いがございます」


「生徒会へ入りたく存じます」


 一同が顔を見合わせる。


 驚きはした。

 だが不自然ではない。

 王太子妃候補なのだから。


「理由をお聞きしても?」


「後学のためですわ」


 即答だった。


「後学?」


「はい」


 アメリアは続ける。


「将来、王家へ嫁ぐ予定にございます」


「そうだな」


「王城での実務も学んでおりますが、現場での運営はまた別の知識が必要かと」


 一同が頷く。


「学園行事の運営」


「予算管理」


「人的配置」


「対外折衝」


「問題発生時の対応」


 アメリアは静かに言った。


「どれも実践でしか学べないものです」


 クラウスは感心する。

 非常に真っ当な理由だった。


「だが、アメリア嬢ほどの方なら卒業後でも――」


「今だから学べることもございます」


 丁寧な口調。

 だが一歩も引かない。


「生徒という立場で経験できることは限られております」


「……なるほど」


「ですので、生徒会へ参加させていただきたく」


 理屈に隙がない。


 しかし。

 副会長が恐る恐る口を開く。


「失礼ですが」


「何でしょう」


「現在、生徒会に欠員はございません」


「存じております」


「でしたら」


 アメリアは微笑む。


「実力をお見せいたしましょうか」


 室内が静まる。


「実力?」


「はい」


 アメリアは鞄から一冊の資料を取り出した。


 かなり分厚い。


 嫌な予感がした。


 クラウスが受け取る。


『学園祭運営改善案』


 ページをめくる。


 予算。

 人員配置。

 会場設計。

 警備。

 物資管理。

 雨天時対応。

 緊急避難計画。

 商会との契約案。

 来年度以降の継続運営方法。


 全部あった。


 全部。


「……」


 クラウスは読み進める。


 副会長も覗き込む。


 会計担当も固まる。


 そして十数分後。


 誰も喋らなかった。

 静寂。


 ただ一人。


「何か問題がございましたか?」


 アメリアだけが不思議そうだった。


 問題はない。


 むしろ。

 恐ろしいほど完成されていた。


「アメリア嬢」


 クラウスが口を開く。


「これはいつ作った?」


「空き時間に」


「空き時間」


「はい」


 嘘ではない。

 本当に空き時間だった。


 生徒会役員たちは黙った。


 たぶん。

 聞いてはいけない。


 そういう類の話だ。


 そしてクラウスは確信する。


 この少女は。

 生徒会に入りたいのではない。


 もう既に。

 生徒会の仕事ができている。


 問題はただ一つ。


 どうやって断るかだった。


 だがアメリアは穏やかに微笑みながら待っている。


 逃げ道など存在しなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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