第六話 ご忠告ありがとうございます
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
入学から半年。
アメリアは疲れていた。
精神的に。
勉学。
王妃教育。
剣術訓練。
社交。
王城での実務。
どれも順調だった。
問題は一つだけ。
ルーカスである。
そしてその日。
学年末試験。
結果発表。
主席。
アメリア・フォン・アルフォード。
次席。
ルーカス王太子。
差は僅かだった。
本当に僅かだった。
放課後。
「アメリア!」
また呼ばれた。
アメリアは静かに目を閉じる。
(またですの)
心の底からそう思った。
「ご機嫌よう、殿下」
「どうしてお前なんだ!」
開口一番だった。
アメリアは沈黙する。
「どうして皆お前を評価する!」
沈黙。
「どうして教師達はお前ばかり褒める!」
沈黙。
「どうして私じゃない!」
沈黙。
周囲が静まり返る。
アメリアは考えていた。
本気で。
何を言われているのか。
なぜ怒っているのか。
理解しようとしていた。
だが。
分からない。
本当に分からない。
「殿下」
「何だ!」
「私が何か失礼をいたしましたか?」
本気だった。
心の底から。
その言葉で。
ルーカスの最後の理性が飛んだ。
「そういうところだ!」
怒鳴り声。
周囲が震える。
「いつも正しい顔をして!」
違う。
「いつも余裕そうで!」
違う。
「私を馬鹿にしている!」
違う。
本当に違う。
アメリアはただ必死だった。
毎日。
毎日。
努力している。
勉強している。
剣を振っている。
王妃教育も受けている。
なのに。
半年。
本当に半年。
何度も。
何度も。
何度も。
同じことを言われ続けた。
そして。
その瞬間。
アメリアの中で何かが切れた。
もちろん。
表情は変わらない。
声も穏やか。
笑顔も崩れない。
ただ。
心の中だけ。
(ああ)
(もう面倒ですわ)
(本当に面倒ですわ)
(これ以上、私の仕事を増やさないでくださいませ)
そこで初めて。
思考が切り替わる。
怒りではない。
反論でもない。
問題解決である。
このままでは今後も続く。
非常によろしくない。
だから。
解決しなければならない。
「そうですわね」
アメリアは静かに頷いた。
「え?」
ルーカスが戸惑う。
「ご忠告ありがとうございます」
完璧な礼。
完璧な笑顔。
「失礼いたします」
そして踵を返す。
ルーカスは理解できなかった。
なぜ反論しないのか。
なぜ怒らないのか。
なぜ認めたような態度なのか。
何も分からなかった。
だが。
アメリアは理解していた。
少なくとも一つだけ。
この問題は放置してはいけない。
それだけは。
はっきりと。
◇放課後
アメリアは生徒会室の前に立っていた。
コンコン。
「失礼いたします」
扉が開く。
中では生徒会役員達が書類を広げていた。
「アメリア嬢?」
生徒会長クラウスが目を見開く。
アメリアは優雅に一礼した。
「一つ、お願いがございます」
後に学園史に残る、
最大の改革の幕開けであった。
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