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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第二章 学園入学編

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第五話 努力なさってくださいませ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 入学から三ヶ月。

 アメリアは平和な学園生活を送っていた。

 少なくとも本人はそう思っていた。


 人は集まる。


「アメリア様!」


 呼ばれる。


「こちらの課題なのですが!」


 質問される。


「こちらの先生はどのような方ですか?」


 答える。


 終わり。


 以前は大変だった。

 だが今は違う。


「私はこう思いますが、皆様はいかがです?」


 誰かが答える。


「私はこの解釈だと思いますわ」


 別の誰かが答える。

 議論になる。


 教え合う。

 学び合う。


 素晴らしい。

 非常に素晴らしい。


 人が集まる理由は未だに分からない。


 だが。

 自分の仕事は減った。


 問題なし。


 アメリアは結論付けていた。


 だから。

 今の最大の問題は別にあった。


「アメリア!」


 その声だった。

 アメリアは静かに目を閉じた。


(来ましたわ)


 心の中だけでため息を吐く。


 ルーカス王太子。


 最近の日課である。


「ご機嫌よう、殿下」


「また人を集めているな!」


「集めておりませんわ」


 即答だった。


「だが集まっている!」


「そうですわね」


 集まっている。

 それは事実である。


 しかし。


「私が呼んだわけではございません」


「結果は同じだろう!」


 意味が分からない。

 本当に。


 アメリアは首を傾げた。


「アメリアばかり目立っている」


「あら」


「教師達も君の話ばかりだ」


「光栄ですわ」


「生徒達も君のことしか見ていない!」


「そうですわね」


 受け流す。


 いつものことだった。

 本当にいつものことだった。


 だから余計に。

 ルーカスは苛立つ。


「君はいつもそうだ!」


「?」


「余裕そうな顔をして!」


 意味が分からない。

 アメリアは余裕など無かった。


 授業。

 剣術。

 王妃教育。

 課題。

 王城での実務。


 毎日忙しい。

 非常に忙しい。


 むしろ余裕が欲しい。


「殿下」


「何だ」


「努力なさってくださいませ」


 沈黙。

 周囲も沈黙。

 ルーカスも沈黙。


 アメリアだけが平常運転だった。


「勉強が出来るようになりたい」

 ↓

「勉強する」

 ↓

「出来るようになる」


 普通である。

 極めて普通である。


「そういうところだ!」


 ルーカスが叫んだ。


 アメリアは少し困惑した。

 本当に少しだけ。

 努力を勧めることは失礼なのだろうか。


 よく分からない。


「……もういい!」


 ルーカスは立ち去る。


 怒ったまま。


 いつも通り。

 アメリアは見送った。


 数秒。

 そして小さく呟く。


「私、何か失礼なことを申しましたかしら」


 周囲の生徒達が一斉に目を逸らした。


 答えられない。

 誰も。


 なぜなら。

 アメリアは本気だったからである。


 だから。

 この頃のアメリアはまだ気付いていなかった。


 ルーカスが怒っている理由は。

 自分が正しいからでも。

 優秀だからでもない。


 ただ。

 自分が欲しかったものを。

 アメリアが当たり前のように持っているからだ。


 その事実を。

 誰よりも。

 アメリア自身が理解していなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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