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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十三章 侵略編攻略

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第九話 解放します

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 翌日。

 空は曇っていた。


 太陽は見えない。

 風は弱い。


 そして。

 川は膨れ上がっていた。


 防波堤管理施設。


 アメリアは計測結果を確認する。


 水位。

 流量。

 流速。


 全て想定通り。


「問題ありません」


 静かな声だった。


 アルフレッドが隣から覗き込む。


「本当に予定通りなのか」


「はい」


 即答。


「むしろ理想的です」


 何が理想的なのか。

 アルフレッドには分からない。


 だが。

 分かる人間がいる。


 アメリアだった。



 昼。

 伝令が到着する。


「報告!」


 全員が振り向く。


「敵軍前進継続!」

「予測地点へ向かっています!」


 アメリアが地図を広げた。


 現在位置。

 進軍速度。

 道路状況。


 計算。


 数秒。


「変動ありません」


 紙へ数字を書く。


「到達予測は?」


 近衛隊長が尋ねる。


「予定通りです」


 アメリアは答える。


「誤差十五分以内」


 室内が静まった。


 何度聞いても異常だった。


 だが。

 ここまで来たら信じるしかない。



 さらに時間が経つ。


 午後。

 再び伝令が到着した。


「敵前衛!」

「最終誘導地点通過!」


 全員の表情が変わる。


 来た。


 とうとう来た。


 戦争終結作戦の瞬間だった。


 アメリアは立ち上がる。


 窓の外を見る。


 川。

 濁流。

 灰色の水。

 膨大な水量。


 自然そのもの。


「あと十七分です」


 誰も喋らない。


 緊張だけが残る。


 アメリアは防波堤制御盤へ向かった。


 分厚い鉄扉。

 巨大な操作装置。

 複雑な解除機構。

 何重にも施された安全装置。


「開始します」


 操作開始。


 鍵。


 封印。


 認証。


 レバー。


 解除。


 解除。


 解除。


 さらに解除。


 普通の人間なら理解するだけで大変な手順。


 だが。

 アメリアは迷わない。


 一切迷わない。


 まるで何度もこなした作業のように。


 次々と処理していく。


「残り十分」


 伝令。


「敵主力到達まで十分!」


 近衛達が固唾を飲む。


 早い。


 手順書を読んだだけの将軍達は理解している。


 普通なら間に合わない。


 アメリアだから成立している。


「解除率八十%」


 数字が進む。


「残り五分!」


 伝令の声。


 緊張が張り詰める。


 アルフレッドも剣へ手を置いた。


 万が一。


 敵に発見された場合。


 ここが戦場になる。


 だが。

 それは起きない。


 全員がそれを願った。



 そして。


「到達」


 アメリアが呟く。


 同時に。

 最後の封印が解除された。


「解放します」


 巨大なレバーを引く。


 一瞬。


 何も起きない。


 次の瞬間。


 地面が震えた。


 轟音。


 まるで山そのものが唸ったかのような音。


 鉄扉が開く。


 その向こう。


 膨大な水。


 押し寄せる。


 解き放たれる。


 濁流。


 奔流。


 怒涛。


 自然の力。


 全てが一気に流れ出した。



 数キロ先。

 敵軍。


「何だあれは」


 一人の兵士が空を見た。


 違う。


 空ではない。


 山だ。


 山の向こう。


 白い壁が見える。


 理解が追い付かない。



 そして。



 理解した瞬間には遅かった。

 


「水だ!!」


 叫び声。


「逃げろ!!」


 怒号。


 混乱。


 命令。


 悲鳴。


 全てを飲み込む轟音。

 


 濁流が敵軍へ襲い掛かった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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