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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十三章 侵略編攻略

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第八話 必ず成功させます

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 出発の日は曇りだった。

 雨は止んでいる。


 だが。

 山々にはまだ水気が残っていた。


 アメリアはそれを確認する。


 河川流量。

 降雨履歴。

 流域面積。

 地質。


 全て予定通り。


 紙の上の数字は。

 濁流が十分な威力を持つことを示していた。


「大丈夫か?」


 声を掛けたのはアルフレッドだった。

 アメリアは資料から顔を上げる。


「何がでしょうか」


「それだ」


 資料の束を指差す。


「出発直前まで読む必要があるのか?」


「あります」


 即答だった。


「数字が変わる可能性がありますので」


 アルフレッドは苦笑した。


 やはり変わらない。

 どこまでもアメリアだった。



 出発部隊は少数だった。


 アメリア。

 アルフレッド。

 近衛騎士。

 公爵領騎士。

 志願兵達。


 総勢二十名ほど。


 少ない。


 だが。

 隠密行動には適している。


「最終確認だ」


 近衛隊長が口を開く。


「目的は防波堤解放」

「敵軍との戦闘は避ける」

「発見された場合は即時離脱」


 全員が頷く。


 作戦は単純だった。


 敵を倒すことではない。

 敵を誘導すること。


 そして。

 濁流で飲み込むこと。


「質問はあるか」


 沈黙。

 誰も手を挙げない。


「よし」


 近衛隊長が頷いた。


「出発する」



 山道は険しかった。

 連日の雨の影響で足場も悪い。


 騎士達が周囲を警戒する。


 アメリアは先頭付近を歩いていた。


 地図を確認しながら。

 迷いなく進んでいく。


「本当に分かるのか?」


 騎士の一人が呟いた。


「何がです?」


 アメリアが振り返る。


「いや」


 騎士は苦笑した。


「この複雑な山道だ」


「普通は迷う」


「迷いません」


 当然のように言う。


「三年前に調査済みです」


 全員が沈黙した。


 またか。

 またなのか。


「いつ調査したんだ」


 アルフレッドが聞く。


「河川管理局監査の際です」


「監査で山を歩くのか」


「必要でしたので」


 当然だった。

 という顔で言う。


 近衛が吹き出した。


「監査官ってそういう仕事でしたっけ」


「違う気がするな」


 笑いが起こる。


 緊張が少し和らいだ。



 昼過ぎ。

 一行は休憩を取っていた。


 その時。

 伝令が到着する。


「報告!」


 全員が立ち上がる。


「敵軍前進開始!」


 アメリアが地図を広げた。


「位置は」


「こちらです!」


 地図へ印が付けられる。


 沈黙。


 アメリアが計算する。


 数秒。

 さらに紙へ数字を書く。


「予測通りです」


 安堵が広がった。


「到着予測は?」


 アルフレッドが問う。


「明日」


 アメリアは答える。


「午後」


「誤差は」


 一瞬。


 計算。


「二十分以内です」


 近衛達が顔を見合わせる。


 やはりおかしい。


 どうやったらそこまで読める。


 だが。

 誰も聞かない。


 聞いたところで理解できないからだ。


「進みます」


 アメリアが言う。


 一行は再び歩き始めた。



 夕方。

 防波堤管理施設へ到着する。


 山中に隠された巨大施設。


 厚い石壁。

 頑丈な鉄扉。


 簡単には開かない。


 だからこそ今まで守られてきた。


「ここか」


 アルフレッドが見上げる。


「はい」


 アメリアが頷く。


「ここです」


 目の前には巨大な鉄扉。


 その向こうには。

 膨大な水。

 雨によって蓄えられた水量。


 自然の力そのもの。


 解放されれば。

 敵軍を飲み込む。


 それほどの力。


「明日だな」


 アルフレッドが言う。


「はい」


 アメリアも頷く。


「明日です」


 短いやり取り。


 だが。

 その重みは大きい。


 この作戦が成功すれば。

 戦争は終わる。


 失敗すれば。

 終わらない。


「必ず成功させます」


 アメリアが言った。


 決意の言葉ではない。


 事実を述べるような声だった。


 それを聞いて。

 護衛達も頷く。


 誰もが同じことを考えていた。


 終わらせよう。

 この戦争を。

 一日でも早く。


 一人でも多く生き残るために。



 その夜。

 一行は施設内で野営した。


 誰もが明日に備える。


 静かな夜だった。


 そして。

 戦争の終わりは。


 もうすぐそこまで来ていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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