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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十三章 侵略編攻略

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第七話 効率的ですね

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 軍議が終わった後も。

 司令部の空気は重かった。


 防波堤解放作戦。


 成功すれば戦争は終わる。


 だが。

 失敗すれば。

 前線に出た者達が敵軍に包囲される。


 危険な任務だった。



 公爵は腕を組んだまま黙っている。


 納得していない。

 当然だ。


 だが。

 作戦の必要性も理解していた。


 沈黙を破ったのは老将軍だった。


「ならば護衛を増やしましょう」


 全員が振り向く。


「防波堤解放中は無防備になります」

「近衛だけでは足りません」

「志願兵を募るべきです」


 数名の将軍が頷いた。


「確かに」

「人手は多い方が良い」

「撤退時の護衛も必要だ」


 公爵は苦い顔のまま頷く。


「分かった」

「志願者を募れ」


 命令は即座に伝わった。



 その日の午後。

 前線駐屯地。


 即席の説明会が開かれた。


 内容は簡単だった。


 危険任務。

 生還保証なし。

 敵主力付近。

 撤退困難。


 沈黙が落ちる。

 

 断っても問題ない。

 誰も責めない。


 本来ならそうなるはずだった。


 だが。


「俺が行きます」


 一人。

 手が上がった。


 若い騎士だった。


「俺も」


「志願します」


「公爵領軍として参加いたします」


 次々と手が上がる。


 アルフレッドが驚いた顔をした。


「お前達……」


 騎士の一人が笑う。


「局長殿が命懸けで行くんでしょう」

「だったら守るのが俺達の仕事です」


 別の兵士も頷いた。


「戦争が終わるなら安いもんです」

「俺達だって早く終わってほしいですからね」


 笑いが起きる。


 重苦しかった空気が少しだけ和らいだ。


 アメリアは小さく目を瞬いた。


 予想していなかったのかもしれない。


 だが。

 誰も迷っていなかった。


 公爵領を守るため。


 王国を守るため。


 その為の危険任務だと理解していた。


 結果として。

 十数名が選抜された。


 王国近衛。

 公爵領騎士。


 そして志願した兵士達。


 いずれも実力者ばかりだった。 


 

 夕方。

 出発前の最終確認。


 近衛達が装備を確認している。

 騎士達も同様だ。


 緊張感はある。

 だが恐怖はない。


 誰もがやるべき仕事だと思っていた。


「本当に行くんですね」


 アメリアが聞く。


 アルフレッドは笑った。


「今さらだろう」


「ですが第二王子殿下です」


「だからだ」


 即答だった。


「危険です」


「知っている」


「帰れない可能性もあります」


「知っている」


 それでも迷わない。


 アルフレッドはアメリアを見る。


「アメリア」


「はい」


「防波堤解放は任せる」


 一拍。


「その代わり」


「あなたは必ず守る」


 当然のように言った。


 監査局長として。


 作戦実行者として。


 王国に必要な人材として。


 その言葉だった。


 アメリアは少し考える。


「効率的ですね」


 言った。


 近くにいた近衛が噴き出した。


 アルフレッドは額を押さえる。


「そういう話じゃない」


「違うのですか?」


「違う」


「なるほど」


 全く分かっていない顔だった。


 だが。

 いつものアメリアだった。


 それを見ていた騎士達が苦笑する。


「局長殿は局長殿ですね」


「そこが安心できます」


「戦争中なのに変わらない」


 そんな声まで聞こえた。


 アメリアはなぜ笑われているのか分からないらしい。

 首を傾げている。


 さらに笑いが起こった。


「とにかく」


 アルフレッドが言う。


「全員で帰るぞ」


 護衛達が頷く。


「はっ!」


 力強い返事だった。


 公爵は少し離れた場所からそれを見ていた。


 娘。

 第二王子。

 護衛達。


 皆が前を向いている。


 だからこそ。

 胸の奥に残る不安を押し込める。


 必要な作戦だ。

 理解している。


 だが。

 父親としては。

 理解と納得は別だった。


 アメリアは地図を抱える。

 アルフレッドは剣を下げる。

 護衛達は装備を整える。


 明日。

 戦争を終わらせる為の作戦が始まる。


 夕暮れの空にはまだ雲が残っていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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