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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十一章 侵略編序章

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終話 成長しましたね

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 アルフォード公爵領。

 公爵家執務室。


 朝。

 アメリアはいつものように書類へ目を通していた。


 改革報告。

 教育機関報告。

 物流報告。

 騎士団報告。

 平常運転である。


 だから。

 執務机に置かれた新しい封筒に首を傾げた。


 王太子府。


「……?」


 珍しい。

 ルーカスから直接書類が届く事は少ない。


 アメリアは封を切った。

 中身を取り出す。


 そして。

 目を丸くした。


 教育機関褒賞金制度。

 人口増加優良領地表彰。

 街道整備推進助成。

 食料備蓄優秀領地支援。

 物流改革成功報酬。


 数枚。

 十枚。

 さらに数枚。


「なるほど」


 思わず笑みが零れた。


 支援ではない。

 褒賞だ。


 誰が見ても自然。

 誰が見ても正当。


 だが。

 教育機関は人材育成になる。

 食料は備蓄になる。

 街道は輸送路になる。

 人口は国力になる。


 全て備えだった。


 アメリアは窓の外を見る。


 遠く。

 王都の方向を。


「気付きましたか」


 小さく呟く。


 その時。

 執務室の扉が開いた。


 ハロルドだった。


「失礼いたします」


「どうしましたか?」


「追加の書類です」


 差し出されたのは一冊の報告書だった。


 表紙を見る。


 公爵領市場調査報告。


 アメリアの目が細くなる。


 ページを開く。

 読み進める。


 食料価格。

 鉄価格。

 薬草需要。

 輸送費。

 荷車不足。


 見覚えのある数字だった。


 そして最後。


 結論。

 戦争準備の可能性あり。


 そこまで読んで。

 アメリアの手が止まる。


「これは……」


 署名を見る。


 作成者:ミリア・レイナード。


 静寂。


 アメリアは椅子にもたれた。

 天井を見る。


 市場の違和感。

 資料収集。

 過去事例照合。

 仮説構築。


 結論。

 全部。


 自分が辿った道だった。


「そうですか」


 思わず笑った。


「そこまで行きましたか」


 誰かが教えた訳ではない。

 答えを渡した訳でもない。


 それでも。

 ミリアは辿り着いた。


 問題を見る。

 原因を探す。

 数字を追う。

 仮説を立てる。

 証明する。


 王太子妃として。

 自力で。


 アメリアは再び報告書を見る。


 丁寧な文字。

 整った構成。

 慎重な表現。


 間違いなくミリアだった。


「ミリア」


 自然と名前が漏れた。


「成長しましたね」


 その声はどこか嬉しそうだった。


 窓の外を見る。


 整備される街道。

 働く領民。

 学ぶ子供達。


 平和だった。


 戦争は起きないかもしれない。

 起きるかもしれない。


 誰にも分からない。


 だから。

 備える。


 起きた時に後悔しないために。


 それが監査だった。


 そして。

 王都では。


 ミリアとルーカスが同じ結論へ辿り着いた。


 アメリアは静かに微笑む。


「頼もしくなりました」


 その言葉を聞いた者はいない。


 だが。

 その笑顔は本物だった。


 戦争はまだ始まっていない。


 だが。

 その準備は。

 既に始まっている。


 帳簿の中で。

お読み頂き、ありがとうございます。

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