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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十章 教育機関創設編

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第五話 人材不足対策です

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 王都郊外。

 新しく整備された建物の前に、多くの人々が集まっていた。


 第一期生五十名。


 教師陣。

 王城の関係者。

 そして王族達。


 王国人材育成計画。


 その第一歩である。



「本当に形になるものだな」


 ルーカスが建物を眺めながら呟いた。


 数か月前。

 監査局長が人材不足を発見した。

 そこから始まった計画である。


 それが今。

 目の前に存在していた。


「私も少し驚いております」


 ミリアが苦笑する。


 王太子妃になってから様々な仕事を経験した。


 だが。

 ここまで大規模な事業は初めてだった。


 予算。

 人員。

 土地。

 教師。

 運営規則。


 一つでも欠ければ成立しない。


 だからこそ。

 完成した今、不思議な達成感があった。


「お疲れ様でした」


 後ろから声がする。

 アメリアだった。


 いつも通りである。

 まるで自分は関係ないかのような顔だった。


「アメリア」


 ミリアが振り返る。


「ありがとうございます」


「何がでしょう」


 本気で分からないらしい。


「この計画です」


「計画書を作成しただけですわ」


 即答だった。


「実施されたのはミリア様です」


 ミリアは苦笑する。

 本当にこの人らしい。


 設計図を書き。

 問題を発見し。

 解決策を提示しておいて。


 完成したら他人事である。



 開校式が始まった。

 選抜された五十名が並ぶ。


 緊張した顔。

 期待に満ちた顔。


 様々だった。


 ミリアはその姿を見る。


 そして思い出した。

 男爵家の娘だった頃のことを。


 勉強が苦手な子。

 得意な子。

 領地で遊んでいた子供達。


 同じ年頃だった。


 もし機会があれば。

 もっと違う未来があったかもしれない。


 そんな子もいた。



「王太子妃殿下」


 一人の少女が声をかけてきた。


 農家出身。

 第一期生の一人だった。


「何でしょう?」


「本当に私達でも大丈夫でしょうか」


 不安そうだった。

 当然である。


 貴族ではない。

 特別な教育も受けていない。


 それでも。

 ここへ来た。


 ミリアは微笑む。


「大丈夫ですよ」


 少女が顔を上げる。


「皆さんは選ばれたのではありません」


「……え?」


「自分の力でここまで来たのです」


 少女が目を見開く。


 そして少しだけ笑った。

 緊張が解けたらしかった。



 その様子を少し離れた場所から見ていたアメリアが首を傾げる。


「何をお話しされていたのですか?」


「少し励ましていました」


「必要なのでしょうか」


 本気で聞いている。


「必要ですよ」


「そうなのですね」


 納得したらしい。


 アメリアは手帳へ何かを書き込んだ。


 ミリアは少し嫌な予感がした。



 式典終了後。

 ルーカスがその手帳を覗き込む。


 そして固まった。


「……何を書いている?」


「運営改善案です」


「嫌な予感しかしないな」


 そこには。


 『定期面談制度』

 『卒業後追跡調査』

 『教師評価制度』

 『監査実施計画』


 と書かれている。


 ルーカスは天を仰いだ。


「お前にとってこれは何なんだ」


 アメリアは不思議そうな顔をした。

 そして当然のように答えた。


「人材不足対策ですが?」



 その後。

 夕暮れの校舎を見ながらミリアは小さく笑った。


「学校ですよね」


 アメリアが首を傾げる。


「人材不足対策です」


「学校です」


「人材不足対策です」


「学校です」


「人材不足対策です」


 二人の会話を聞いていたルーカスがため息を吐いた。


「もうどちらでもいい」


 完成した建物には、子供達の声が響いている。


 王国初の人材育成機関。

 アメリアにとっては人材不足対策。

 ミリアにとっては未来への投資。


 だが一つだけ確かなことがあった。


 この日。

 王国は一つの新しい仕組みを手に入れたのである。

お読み頂き、ありがとうございます。

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